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命蓮寺
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寅丸 星:
おや? 貴方がここに来るなんて珍しいですね。
仏教に興味でも、お持ちになったんですか?
東風谷 早苗:
はいっ! 実はその通りなんです!
私、最近仏教について学び直していて。
東風谷 早苗:
多くの人間から信仰を集める仏教とは何か、
学ぶ中で気になることがあり、聞きに来ました!
寅丸 星:
それはそれは……。勉強熱心ですね。
私に答えられることであれば、お答えしますよ。
東風谷 早苗:
ありがとうございます! さっそくですが、
仏教には、空という考え方があるんですよね。
東風谷 早苗:
本来、自己の存在は空であると。
それを認めて、改めて自己の存在を再確認する。
寅丸 星:
その通りですね。
それについては、聖もよく説いています。
東風谷 早苗:
しかし、それは同時に、
自己の存在を否定するということですよね?
東風谷 早苗:
もっといえば神様や妖怪、貴方自身の存在さえも
否定することになるはずです。
東風谷 早苗:
気になったのは、そこです。どうして仏教は、
そんな恐ろしい教義を広めているのでしょうか?
寅丸 星:
……なるほど。お答えするとすれば、
それは、苦しみから解放するためです。
寅丸 星:
神や妖怪は、人間が厄災や飢饉を退けるため、
偶像として生み出した存在と言えるでしょう?
東風谷 早苗:
たしかに。私が現人神であるのも、
人々が、そう信仰してくださっているからです。
寅丸 星:
信仰……そう。つまりは、ある種の思い込みです。
私たちは、思い込みによって存在している。
寅丸 星:
そのような曖昧なものに拠って立つには、
少しばかり、不安になるものではないでしょうか。
東風谷 早苗:
それは……たしかに。
寅丸 星:
しかし、空を認め、己の在り方を再認識すれば、
神でも妖怪でも、自己の存在を強く持てます。
寅丸 星:
誰に拠るのでなく、己の存在で立つ……。
苦しみからの解放とは、そういうことです。
東風谷 早苗:
なるほど……。仏教では、神や妖怪の存在から
捉え直そうとしているんですね。
東風谷 早苗:
でも、一歩間違うと危険な考え方かも……。
ウチの神社の教義とは、ずいぶん違うみたい。
寅丸 星:
もちろん捉え方は、それぞれです。なので、
この機会にぜひ入門して、さらなる深堀りを……
東風谷 早苗:
大変勉強になりました! 今回のことを踏まえて
どうやって神社の信仰を集めるか考えてみます!
東風谷 早苗:
お話、ありがとうございました!
ではでは、私はこれにて~!
寅丸 星:
……行ってしまった。もしかして、
仏教に興味を持ったのは、信仰集めのため……?
寅丸 星:
はぁ。こんなことなら、真面目に話すべきじゃ
なかったかな。