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命蓮寺
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寅丸 星:
お薬の補充、ご苦労様です。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
こちらこそ、毎度ありがとうございます。
また、よろしくね。
寅丸 星:
ええ、もちろんです……あの、
貴方は竹林の屋敷に住んでいるんですよね?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
ん、そうだけど? それがどうかした?
寅丸 星:
いえ、今夜は十五夜でしょう?
竹の間から望む月は、さぞや美しいだろうなと。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
ああ、なんだ。そんなこと。
それなら今夜、貴方も竹林へ来るといいわ。
寅丸 星:
そうしたいのは、山々なんですが……。
今日は留守番をすることになっていまして。
寅丸 星:
聖たちは、里の祭りへ行っていますし、
夜の長時間、寺を空けるわけにもいかず……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
ふ~ん。
毘沙門天の代理っていうのも、大変なのね。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
あ、それなら、いい考えがあるわ。
ちょっと、私の目を見ててちょうだい。
寅丸 星:
目を、ですか?
はぁ、わかりました……。
寅丸 星:
えっ! ここは、竹林!?
どうして? さっきまで、寺に……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
ふふふ、私の能力を使わせてもらったわ。
ねぇ、ほら。上を見てみて。
寅丸 星:
おおぉ。月が、黄金色に輝いています。
なんと、美しいのでしょう……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
よかった。気に入ってもらえたなら、光栄だわ。
寅丸 星:
ありがとうございました。
竹林の月が、あんなに綺麗だとは……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
今見せたのは、幻覚に過ぎないわ。
本当の竹林から見る月は、もっと美しいわよ。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
今回はダメかもしれないけど、
ぜひいつか、本物を見に来てちょうだいね。
寅丸 星:
もちろんです! あれより美しい月なら、
見に行かないと、罰が当たりそうですから。