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命蓮寺
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寅丸 星:
ふぅ。今日もなんとか終えられました。
人が多いと緊張してしまうのは、やはり治りませんが……。
寅丸 星:
あ、聖。お疲れ様です。
今日の私の法話、どうでしたか?
聖 白蓮:
……まだまだ、ですね。
寅丸 星:
え……。
聖 白蓮:
話の一節が長すぎ、話し方も速すぎです。
今日は、小さいお子さんもいたのですよ?
聖 白蓮:
もっと話の折り目で、聞いている皆さんが
理解できているか、気にかけるべきでしたね。
寅丸 星:
うっ……。確かに、その通りですね。
申し訳ありません……。
寅丸 星:
まさか聖にここまでダメ出しをされるとは……。
やはり、私に法話など向いていないのね。
聖 白蓮:
あっ……いえいえいえ! すみません、
落ち込ませたかったわけではなく……!
聖 白蓮:
話の内容自体は素晴らしいものでしたし、
熱心に聞いている方も多かったですよ。
寅丸 星:
気を遣ってもらうのは、ありがたいですが、
やっぱり未熟者の私には、まだまだ……。
聖 白蓮:
気なんか遣ってません! その、ナズーリンから
星が悩んでいるという話を聞きまして……。
聖 白蓮:
自分の法話が皆さんに届いているのか、
自信が持てずにいるのでしょう?
寅丸 星:
え、ええ。聞いてくださる皆さんからは、
ありがたがられるばっかりでしたし……。
寅丸 星:
聖に感想を訊ねても、いつも「よかった」としか
言っていただけず、気を遣われているようで。
聖 白蓮:
私としては、いつも正直な感想を
述べていたつもりでしたが……。
聖 白蓮:
とにかく、そういった話を聞いていたので、
今回は趣向を変えてみたのです。
聖 白蓮:
いつものように、ただ褒めるのではなく、
あえて厳しい指摘をしてみよう、と。
寅丸 星:
そういうことだったのですか……。
寅丸 星:
心配をかけてしまい、申し訳ありません。
ですが、やはり未熟な私には……。
聖 白蓮:
まだそんなことを言っているのですか!
もっと自信を持ちなさいっ!
寅丸 星:
は、はいっ!
聖 白蓮:
……それでも自信が持てないのなら、
私の「よかった」という言葉を信じてください。
寅丸 星:
聖……そうですね。色々とすみません。
貴方の言葉を信じて、今後とも精進します。
聖 白蓮:
ふふ、それでいいのです。
期待していますよ、星。