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命蓮寺
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寅丸 星:
……なるほど。
この寺について、私から話を聞きたい、と。
八雲 藍:
はい。この寺がどういった所なのか、
信仰の対象である貴方から話を聞きたいのです。
八雲 藍:
(近頃ますます支持を集めている、この妖怪寺。
何か企んでいないか、調査しなくては……)
寅丸 星:
わかりました。ですが、今日は予定が
立て込んでいて……その後でもいいでしょうか?
八雲 藍:
問題ありません。もしよろしければ、
同行させていただけないでしょうか?
寅丸 星:
え? ええ。構いませんけど……。
八雲 藍:
(丸一日、近くで様子を窺っていれば、妙な方法で
信仰を集めてたりしないか、確かめられるはず)
寅丸 星:
……つまり、一口に妖怪といっても多種多様で
一概に敵視すると、危険になることもあります。
八雲 藍:
(これだけ多くの人前で、堂々と話を……。
だからこそ、信仰を得られているということか)
寅丸 星:
……それは、決して難しいことではありません。
仏の教えの中には、こういったものもあり……。
里の人間:
な、なるほど! そんな考え方もあるのですね。
ありがとうございます。
八雲 藍:
(なるほど。こうして丁寧に人々と向き合い、
確実に信頼と信仰を得ているのか)
八雲 藍:
(しかし、ずいぶんと忙しいみたいだな。
朝からずっと、働き詰めのようだが……)
寅丸 星:
さて、次の予定は……あれ? 予定帳がない!?
忘れてきたのかしら? どうしましょう……。
八雲 藍:
次のご予定ですか? たしか、懇意にしている
茶屋に寄ると、先ほど話していたような……。
寅丸 星:
あっ、そうでした。さすがは式神さん……って、
ああっ、もうこんな時間! 大変、急がないと!
八雲 藍:
(……案外、抜けてるところもあるな。
演技ではなさそうだし、これが素なのだろうか)
寅丸 星:
何度も助けていただき、ありがとうございました。
さて、予定はすべて終わりましたので……。
八雲 藍:
ああ、お伺いするつもりだった
お話の件は、もう大丈夫です。
寅丸 星:
えっ……、よろしいのですか?
寺について具体的なことは、まだ何も……。
八雲 藍:
今日一日、貴方に同行したことで、
十分、色々なことを知れましたので。
寅丸 星:
そうですか。ならいいのですが……。
八雲 藍:
(調査してわかった。真面目で素直なこの方が
何か企んでいるということは、なさそうだな)
八雲 藍:
また来ます。
今度はゆっくり、お茶でも飲みに。
寅丸 星:
ええ……ぜひ!
美味しいお菓子を用意しておきますね。