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神霊廟
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物部 布都:
うーむ。もしも仙人になれたとして、
さらに天人を目指して、修行すべきか否か……。
比那名居 天子:
やあ、仙人見習い。
修行の進捗を見に来てやったぞ。
物部 布都:
わっ! 天人!
比那名居 天子:
なんだ、その反応は?
私が見に来てやったのに、嬉しくないのか?
物部 布都:
(嬉しいわけ、なかろう~!
でも、ここは機嫌を取るのが吉か……)
物部 布都:
我のような若輩者に、声をかけていただけて、
なんだか恐れ多くなってしまい……たはは。
比那名居 天子:
そうかそうか! 偉大な天人を前にして、
思わず恐縮してしまうのは当然のこと。
物部 布都:
いやはや、面目ない。
今日は精一杯、おもてなしさせていただきます。
比那名居 天子:
……ふむ、そうか。
まあ、もてなされてやるかな。
物部 布都:
こちら、人里で人気の西洋菓子です。
あっ! 召し上がる間、肩をお揉みいたしましょう。
比那名居 天子:
味は、まあまあだな。ふぅ……。
なんか、食べてたら暑くなってきた。
物部 布都:
うちわで扇ぎましょうぞ~!
で、物は相談なのでございますが……。
物部 布都:
我が仙人になった暁には、天人候補として……
天界に紹介してもらえませぬか?
比那名居 天子:
……今日は、もう帰る。
物部 布都:
ふえっ? わ、我に何か落ち度でも……。
比那名居 天子:
巧言令色、鮮なし仁。
心ない世辞は、己の不誠実を露呈させるだけだ。
物部 布都:
んなぁ!? ヨイショがバレておったとは!
我の努力は水の泡か……。
比那名居 天子:
私の機嫌取りなんかじゃなく、
修行のために努力を費やすべきだったな。
比那名居 天子:
仙人見習いよ、また会おう。
そのときは、ぜひ修行の成果を見せてくれ。
物部 布都:
あの不良天人から、あんな正鵠を射た言葉が
出てくるとは……。うーむ、あなどれぬ!