--------------
迷いの竹林
--------------
物部 布都:
竹林の中から煙とは、面妖な……。
もしや、山火事でも起きているのか?
物部 布都:
寄り道してる時間はないが、
ホントに山火事なら大変だしのう……。
藤原 妹紅:
心配してもらったところ悪いけど、
私が建てた石窯の煙だよ。
物部 布都:
うわっ! なんだ、おぬしか。
なるほど。確かに立派な石窯があるな。
藤原 妹紅:
あまりに暇すぎて、陶芸のまねごとをね。
でも、上手くいかなかったから、もうやらない。
物部 布都:
よくよく見たら、大量の皿が捨てられておる。
なんだか、もったいないのう。
物部 布都:
せっかくだし、これを我にくれぬか?
失敗作なら、気兼ねなく投げられる。
藤原 妹紅:
なんだ? こんなのがほしいのか?
好きなだけ持っていっていいぞ。
物部 布都:
それはかたじけない!
物部 布都:
しかしだな。せっかく始めた陶芸を
簡単にやめてしまうのは、惜しくないか?
藤原 妹紅:
どうして?
物部 布都:
我の生きていた時代のツボや皿が、
外の世界には今でも残されていることがあると聞いてな。
物部 布都:
もし、千年後も残る一品を作れたら、
おぬしの人生も楽しみが増えるんじゃないか?
藤原 妹紅:
楽しみ、ね。
……ま、覚えとくよ。
物部 布都:
はっ、忘れておった!
太子様から、買い物を頼まれておったのだ。
物部 布都:
我ら、貴重な不老不死の仲間として、
永遠の命をエンジョイしていこうぞ!
物部 布都:
皿を焼くのが嫌なら、餅でもいいぞ。
餅なら何個でも食べられるし。ではな!
藤原 妹紅:
なんて慌ただしいやつだ。そのうち、
何か焼いたら、持っていってやるかな。