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守矢神社
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物部 布都:
炊き出しの列が、境内の外まで伸びておる。
守矢神社の催し物は、いつも盛況だのう。
物部 布都:
参拝客の目当ては、炊きたての新米か。
……しかし、釜が見当たらんな。
物部 布都:
巫女たちは接客で忙しくしておるし、
となると、飯炊きは誰が……?
物部 布都:
さて、台所に忍び込んでみたが……。
なんだ、この湯気を出している機械は!?
物部 布都:
湯気からは、炊きたての米のにおい。
なるほど、この機械で……。
八坂 神奈子:
不法侵入とは、感心しないね。
物部 布都:
おぬしは……! しかし、もう手遅れじゃ。
守矢神社の秘密、この目で見たり!
物部 布都:
得体の知れぬ機械を使っていると知られたら、
参拝客からの信用はガタ落ちだのう。
八坂 神奈子:
あら、ちょうど炊けたようだね。
お茶碗によそるから、試しに食べてみない?
物部 布都:
ふん。怪しげな機械で炊いた米など……。
なんだこれは、米粒が輝いておる!?
物部 布都:
おおっ……。箸で軽く持ち上げただけで、
ふっくらとした弾力が伝わってくるぞ。
物部 布都:
しかも、湯気から香るほのかな甘みは、
嗅ぐだけでツバがあふれてくるほどだ。
八坂 神奈子:
で、食べないの? 小腹が空いてきたし、
せっかくだから私が食べちゃおう……。
物部 布都:
だ、誰も食べないとは言っておらんぞ。
この白米は、我のものだ!
物部 布都:
ふぅ。食った食った。
2杯も、おかわりしてしまった。
八坂 神奈子:
ところで、今後も秘密にしてもらえたら、
たまに炊きたてをご馳走してもいいけど?
物部 布都:
我を脅そうというのか!?
そんな卑劣な脅迫に、我が屈するなど……。
物部 布都:
おかずもつけてくれ。
八坂 神奈子:
ふふふ。いいでしょう。
では、私は仕事があるので……。
物部 布都:
よしよし。我の巧みな交渉術で、
おかずまで付け足させてやったぞ!
物部 布都:
しばしの間、ごちそうには困らんな。
あーっはっはっは!
八坂 神奈子:
別に炊飯器がバレたところで、
奇跡の力だって説明すれば、それで済むからね。
八坂 神奈子:
でも、せっかく餌付けに成功したんだもの。
あの道士には、しばらく通わせましょう。
八坂 神奈子:
神霊廟の秘密でも、漏らすかもしれないし。
これからが楽しみだ。うふふ……。