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寺子屋
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今日は招いてくれて礼を言うよ。
現代の学問にも興味があったからね。
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こちらこそ、授業の手伝いを引き受けてくれて、
ありがたい。感謝するよ。
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本物の聖徳太子と聞いて、ぜひ話を聞きたいと
思っていたんだ。それで、どんな話をする気だ？
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期待に応えて歴史の話を……と思ったが、
今日は、『コウモリの視界』という話をしよう。
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ほう。たしか、コウモリの飛び方を知っていても、
空を飛ぶ時の感じ方はわからないという話だな。
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左様。私たちは、コウモリがどう飛んでいるか、
知識として知ることができるが……、
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しかし、コウモリにとって『飛ぶ』とは、
『歩く』のか『泳ぐ』のか、その感覚はわからない。
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コウモリではない者に、コウモリの感覚を
理解することは決してできない、という話だ。
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つまり私たちは、自分以外の他人の気持ちなど、
絶対にわからない。というわけさ。
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なるほど。相手の感じ方がわからない以上、
相手のすべてを知ることは確かに不可能だな。
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そうだ。他人のことは、他人しかわからない。
相手の話が本当か、判別することさえも不可能。
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私は、人の本質を聞ける耳がある。
しかし、それさえ真実なのかは、わからない。
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君が上白沢慧音であると伝えられても、
それが真実かを確かめる方法はないのだ。
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……なにが言いたいんだ？
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君が何者か知る術がないなら、
私の目の前にいる君はいったい、何者だ？
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私は、上白沢慧音だ。
幻想郷の歴史を編纂し、人間を守る。
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たとえ存在を疑われようとも、真実はただ一つ。
それだけだ。
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なるほど、それが君の考え方か……。
頼もしい限りだ。
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いや、問い詰めるような真似をして悪かった。
この話をしたのには、理由があってな。
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里は平和だが、人々の危機感は薄い。だから、
不気味な話で、皆の意識を高めようと思ってな。
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そうだったのか。あなたも人が悪い……。
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だが、素晴らしい答えであった。
君のような人物がいるのなら、里も安心だな。
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