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人間の里
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里の住人A:
聖人様、どうかお聞きください。
今、とても悩んでいることが……。
豊聡耳 神子:
大丈夫だ。君の悩みは聞こえた。
君の抱える病を恐れずに家族へ打ち明けなさい。
豊聡耳 神子:
君の家族の言葉が、きっと君の助けになるはずだ。
里の住人A:
おお、ありがとうございます!
やはり家族に相談したいと思います!
豊聡耳 神子:
よし、次は誰かいないか? 私が悩みを聞こう。
古明地 こいし:
なんか面白そう。
はいはーい! 私の悩みを聞いて!
豊聡耳 神子:
いいだろう……こ、これは……!?
悩みが、まったく聞こえてこない……!
古明地 こいし:
ん? どうかしたの?
豊聡耳 神子:
い、いや、なんでもないよ。ははは……。
豊聡耳 神子:
(人目もあるし、わからないとは言えない。
しかし、直接聞くわけには……、そうだ!)
豊聡耳 神子:
君の悩みは、確かに聞こえた。だが君の悩みは、
自分の口から語るべきものだと私は思う。
古明地 こいし:
えー。ちゃんと聞こえたのに?
でも、自分で言った方がいいのかなぁ……。
豊聡耳 神子:
ああ。私は、悩みを解決する案は出せるが、
その案を実行するのは君だ。さあ勇気を出して!
古明地 こいし:
そうだよね。うん、言うよ!
私の悩んでたのはね……。
古明地 こいし:
駄菓子屋さんのお菓子が当たったことをね、
おばあちゃんに言っても気がつかれないの!
豊聡耳 神子:
……え?
古明地 こいし:
もったいないけど、当たりのもう一本は、
あきらめた方がいい?
豊聡耳 神子:
あー……。その、よく言ってくれたよ。
それは、気がつかれるまで言っていいと思うぞ。
駄菓子屋さん:
ああ、そうだったのかい。悪かったねえ。
お嬢ちゃん、次からは私も気を付けるよ。
古明地 こいし:
わーい、ありがとう! 次当たったら持ってくよ。
あー、すっきりした、そろそろ帰ろーっと。
里の住人B:
なんか、勿体振った割には、
大したことない悩みだなぁ……。
豊聡耳 神子:
いやいや、悩みの大きさは、当人しかわからない。
その大きさを、他人が評価するものではないよ。
里の住人B:
そ、そうだよな。やっぱり聖人様はすげえや!
豊聡耳 神子:
しかし……、声をかけたところで、
彼女の声は本当に気づかれるのだろうか……。
豊聡耳 神子:
もしや、無責任なことを言ったかもしれない。
今後、彼女のことは気に留めておかねばな。