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永遠亭
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今泉 影狼:
ごめんくださーい。
毛のお手入れに使う薬ってありませんかー?
因幡 てゐ:
はいはーい。今日はみんな留守なんで、
私が対応するよ。毛の手入れ用の薬だね?
今泉 影狼:
そう。噂でそういう薬があるって聞いてね。
ここで買わせてもらえない?
因幡 てゐ:
もちろんいいよ。しかも、今ならタダでもいい!
私のお願いを聞いてくれたらね。
今泉 影狼:
えっ、タダ!? もちろん聞くわ!
あっ、でも危ないことだったりしない……?
因幡 てゐ:
屋敷に、私特製防犯用トラップを仕掛けたんだ。
そのテストがしたいんだよね。
因幡 てゐ:
罠をよけて薬を手に入れられたら、
そのまま、あんたにプレゼント。どう?
今泉 影狼:
うーん、ちょっと怖いかも……。だけど、
今日は月も出てるし、挑戦してみようかな。
因幡 てゐ:
よしきた! 薬はこの廊下の一番奥だよ。
私の自慢のトラップ、よけきれるかな?
今泉 影狼:
よーし。狼の運動神経なら、きっと大丈夫!
全部の罠をよけて、この廊下を駆け抜けてみせるわ!
今泉 影狼:
全然トラップなんてないように見えるわね。
……うわっ、何か来る!
今泉 影狼:
床から竹が伸びてきた!?
でも、これだけじゃないはず……。はっ、殺気!
今泉 影狼:
竹って、そんな速く飛ぶの!?
よけないと、洋服がダメになっちゃう!
今泉 影狼:
こんなに、いろんなトラップがあるなんて……
でもゴールは近いはずだし、がんばりましょう。
因幡 てゐ:
おめでとう! 鈴仙でも見破れないはずなのに、
あんたやるね。おかげで改善点がわかって満足さ。
今泉 影狼:
月が出てなかったら、普通に危なかったわ。
でもこれで、薬はタダで私のもの……。
今泉 影狼:
ああ!? 竹槍が薬を割っちゃった!?
ま、まだかき集めれば使えるはず!
因幡 てゐ:
油断したねー。あんた毛深そうだし、
たぶんそれだけじゃ足りないんじゃない?
今泉 影狼:
そんなことないわよ! 今はそこまで毛深くないし、
残った分で足りるわ! たぶん、きっと……。
因幡 てゐ:
そんな泣きそうな顔しないでよ……。
まあ、後で作り直しておくよう頼むからさ。
今泉 影狼:
せっかくトラップはよけられたのに。
ぐすん……。