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迷いの竹林
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今泉 影狼:
くんくん。こっちから何か、
珍しい匂いがするような……って、あれは……!
今泉 影狼:
貴方、狼よね!? 私以外の狼の妖怪なんて、
初めて見たわ! この竹林に住んでるの?
今泉 影狼:
あっ……、ごめんなさい急に。
どうしても気になっちゃって……。
犬走 椛:
構わないけど……、私は狼の妖怪じゃないわ。
妖怪の山に住んでいる、天狗よ。
今泉 影狼:
え、天狗? とてもそうは見えないけど……。
だって天狗って、鳥みたいな妖怪よね?
今泉 影狼:
貴方の見た目は鳥っぽくないし、その耳と
しっぽは、紛れもなく狼のものじゃない。
犬走 椛:
貴方が言っているのは、鴉天狗のことね。
私も白狼天狗という、天狗の仲間なの。
今泉 影狼:
うーん。どうしても、狼に見えるのよねぇ。
くんくん。それに匂いだって……。
犬走 椛:
ひゃっ、嗅ごうとしないで!
とにかく私は天狗よ! 狼じゃないわ!
今泉 影狼:
ああ、天狗と言えば……以前、天狗の新聞に
載っていたのも貴方かしら? ほら、これ。
今泉 影狼:
いつか会えたらいいなーと思って、とっといたの。
この狼のように噛みつく、弾幕の写真。
犬走 椛:
これは、狗符「レイビーズバイト」……。
確かに私の写真ね。まあ、狼っぽいけど……。
犬走 椛:
うーん、どう説明したらいいのかしら。白狼とは
つくものの、あくまで私は天狗なのよねぇ。
犬走 椛:
あっ、そうだ、この服装! 頭襟に
一本歯下駄は、天狗の特徴って言えるでしょ?
今泉 影狼:
確かに天狗っぽいけど……。なら私も
その格好をしたら、天狗になれちゃわない?
犬走 椛:
うう、これじゃ説得力がないか……。
ええと、それなら……。
犬走 椛:
ほら、さっきの新聞記事でも、私のことを
「白狼天狗」と紹介しているわ! これが証拠!
今泉 影狼:
うーん。この新聞、たまに内容が
うさんくさいから、あまり信じられなくて……。
犬走 椛:
それは本当にそうだけど! あれ、もしかして
私が天狗だと証明できるものって、何もない……?
今泉 影狼:
やっぱり狼の妖怪なんじゃない? ねえ、
同じ狼として、悩み相談をしたいんだけど……。
犬走 椛:
こ、これ以上は、ほかの白狼天狗に聞いて!
山に行けば、たくさんいるから!
犬走 椛:
私は永遠亭にお薬をもらいにいかなきゃいけないし、
これで失礼するわ!
今泉 影狼:
あっ、行っちゃった……。
って、山に仲間がたくさんいるですって?
今泉 影狼:
群れで生活してるなんて、ますます狼みたいね!
私も仲間に入れてもらえないかしら?
今泉 影狼:
けど、会いにいくのはちょっと怖いわね……。
今度、勇気が出たら会いにいってみようっと!