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霧の湖
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稀神 サグメ:
(霧が濃い。さすがに、こんな所に人なんて……。
いや、あそこに誰かいる?)
十六夜 咲夜:
あら、こんにちは。
外でお茶を楽しもうと思いまして。
十六夜 咲夜:
この辺は霧が濃くて、少し肌寒いでしょう?
だから、温かいお茶が美味しく飲めるんです。
十六夜 咲夜:
よければ、飲んでいきませんか?
味は保証します。普段から淹れているので。
十六夜 咲夜:
これ、その辺の野草を煎じた、お茶なんです。
いろんな茶葉で作るのが楽しくて。
稀神 サグメ:
(これが、お茶!? 黒くて濁ってるし、
飲んだら危なそうな匂いまで……!)
稀神 サグメ:
(ここは能力を使ってでも、
私が飲む、という運命を捻じ曲げる!)
稀神 サグメ:
け、健康に良さそうな色ね! いただきます!
全部、飲み干してみせますよ!
十六夜 咲夜:
そんなに飲みたかったの?
じゃあ、私も一緒にいただきますわ。
稀神 サグメ:
(しまった! 私が飲むのではなく、
二人で飲む、に変わったの!?)
稀神 サグメ:
す、すみません! 熱いお茶は苦手でして!
冷めるまで置いておきませんか!?
十六夜 咲夜:
あら、もしかして猫舌ですか?
大丈夫。すぐ飲める温度で淹れますから。
稀神 サグメ:
(ダメだ! 思いつきで何かを言っても、
全部裏目に出てしまう……!)
十六夜 咲夜:
……よし。この温度なら大丈夫そうね。
じゃあ、一緒に飲みましょうか。いただきます。
稀神 サグメ:
(もうダメね……。
覚悟を決めて、飲むしかないか)
稀神 サグメ:
い、いただきます。……うっ、これは!?
十六夜 咲夜:
今回は当たりね。薬草茶みたいな、いい苦味。
こういうのって、身体にいいのよね。
稀神 サグメ:
(身体の芯から温まって、身体も軽く感じる……。
た、助かった……、ってことでいいのかしら?)