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紅魔館
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紅 美鈴:
紅魔館の案内は、以上です。
何か気になるところは、ありますか?
稀神 サグメ:
(あの台座……。
何も飾られていないのは、なぜなのかしら?)
紅 美鈴:
ああ、あれですか。何もないわけではありません。
ウチのお嬢様が、ある石像を飾っておりまして。
紅 美鈴:
えーっと、たしか選ばれた人にしか、
見えも触れもしない像? なんだそうです。
稀神 サグメ:
(ふむ……。それはまた、不思議な石像ね。
私には、何も見えないけど……。)
紅 美鈴:
残念ながら、私にも見えないんですよね。
どうです? 石像、触れそうですか?
稀神 サグメ:
(うーん……、ダメね。
手をかざしてみても、何も感じない)
稀神 サグメ:
(そもそも、何も置かれてないのでは……。)
紅 美鈴:
ですよねぇ。でも、像が絶対にないとも
言い切れないし、ないと証明するのも難しそう。
稀神 サグメ:
(ですが、像があることを証明するのも、
難しい……。)
稀神 サグメ:
(たとえ証拠を用意できても、
その確実性は誰にも証明ができない)
稀神 サグメ:
(なんなら、私たちがここにいることも、
誰にも証明できないのかもしれない……。)
紅 美鈴:
うーん。確かに、そう言われるとそうかも……。
ちょっと不気味な話ですけど。
稀神 サグメ:
(とはいえ、台座の上に本当に像があるのなら、
そこに何かが置かれることはないでしょう)
十六夜 咲夜:
あなたたち、そんなところで何やってるの?
片方はなんにも喋ってないし。
紅 美鈴:
何って、コミュニケーションですよ。
気の流れさえ読めれば、相手の言うこともわかる!
紅 美鈴:
ということで、喋れないこの方と
言葉によらない対話を行っていたまでです。
十六夜 咲夜:
……はあ。良いから。さっさと仕事に戻りなさい!
紅 美鈴:
わかりましたよ戻りますって……うわっ!?
稀神 サグメ:
……!!
稀神 サグメ:
(だ、大丈夫ですか?
盛大に転んだようですけど……。)
紅 美鈴:
いやぁ、考えごとしながら歩くと危ないですね。
……あれ? 私、いま台座の上に乗ってる?
稀神 サグメ:
(ということは……、やっぱりそこには、
最初から何もなかったようですね。)