--------------
人間の里
--------------
森近 霖之助:
うん? その黒い箱を、僕に調べてほしいって?
十六夜 咲夜:
ええ。さっき、そこで拾ったんですけど、
なんなのか、よくわからなくて……。
森近 霖之助:
……ふむ。どうやらこれは、写真機のようだね。
十六夜 咲夜:
え、写真機?
私の知ってるものと、かなり形が違うけど……。
森近 霖之助:
原理は同じはずだよ。シャッターを押すと、
画がフィルムに記録され、現像すれば写真になる。
森近 霖之助:
たぶん、これがレンズだから、この蓋を外せば
フィルムが……あれ? 開かないな。
十六夜 咲夜:
取り出せないの? そもそも、この小さな箱に、
フィルムなんて入ってるのかしら?
森近 霖之助:
入ってなきゃ、どうやって画を記録するんだい?
小さくても、絶対に入ってるはずだ。
森近 霖之助:
道具屋の意見を信用しなよ。
蓋が固いだけで、もう少しがんばれば……。
森近 霖之助:
あ、あれ……? フィルムが、ない?
おかしいな、小さな部品だけだ。
射命丸 文:
すみませ~ん、そこのお二人さん! この辺で、
黒い箱みたいな写真機を見ませんでしたか?
十六夜 咲夜:
黒い箱……? それって、これのことかしら?
射命丸 文:
あ、それです……って、わあ!
壊れちゃってるじゃないですか!
射命丸 文:
作ってもらったばかりの試作品なのに、
蓋も取れて中身も剥き出しに……どうして?
森近 霖之助:
そ、それは残念だね。僕らが見つけたときには、
もう、この状態になっていたよ。
射命丸 文:
そうですか……。はぁ、直してもらえるかなぁ。
十六夜 咲夜:
どうやら、使い方を間違えたみたいね。
森近 霖之助:
うん……。僕が壊したことは、
どうか内密にしてくれ。