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神霊廟
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吉弔 八千慧:
貴方がここの仙人ですね。
聞くに、仏教と道教に明るいのだとか。
吉弔 八千慧:
よければ、お話を聞かせていただけませんか?
私、宗教に帰依したいと考えておりまして。
豊聡耳 神子:
それはそれは。大歓迎ですよ。
まずは仏教からにいたしましょうか。
豊聡耳 神子:
……と、仏教と道教、それぞれの核の教義は
こんなものでしょうか。満足いただけましたか?
吉弔 八千慧:
ええ。とてもわかりやすかったです。
丁寧に説明いただき、ありがとうございます。
吉弔 八千慧:
(信仰心について知り、支配に活かすために
来ましたが……、魅力が理解できませんね)
吉弔 八千慧:
(こんなものを尊ぶなんて、愚かな人間霊たち。
偉大とされるこの仙人も、しょせんは……)
豊聡耳 神子:
ああ、ちなみに。宗教には、支配に
とても役立つ道具としての面もあります。
豊聡耳 神子:
例えば、仏教の教義は
民衆を権力者に従わせるために都合がいい。
豊聡耳 神子:
現に、私も政治に利用しました。……貴方が
本当に聞きたかったのは、こういう話だろう?
吉弔 八千慧:
……ええ、ご明察です。
よく、わかりましたね。
豊聡耳 神子:
貴方の欲の形は、最初から見えていたからね。
宗教に帰依する気なんて、さらさらないことも。
吉弔 八千慧:
これは一本取られましたね。
貴方も、宗教を利用する側の者だったとは。
豊聡耳 神子:
はは。宗教は、貴方のような野心家にとっても
興味深くて有用なものだろう。
豊聡耳 神子:
もっと聞かせようか。私が、
仏教を具体的にどう利用したかというとだな……
豊聡耳 神子:
こんなところか。ご満足いただけたか……、
その様子では、聞くまでもないようだね。
吉弔 八千慧:
ええ、貴方に感謝を。
とても有益なことを聞きました。
豊聡耳 神子:
それは結構。……ああ、私はそろそろ
失礼する。弟子の稽古があるのでね。
吉弔 八千慧:
まったく、油断ならない仙人でしたね。
あんな者もいるなんて。
吉弔 八千慧:
宗教、か……。敵にまわったときに
どう対処すべきか、よく考えなくてはね。