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地霊殿
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杖刀偶 磨弓:
うーん。どうしよう……。
このままじゃ、次の戦は負けてしまうわ……。
埴安神 袿姫:
あら、貴方が悩むなんて、珍しいわね。
どうしたの?
杖刀偶 磨弓:
実は最近、部下の統制がとれていなくて……。
埴輪兵団としては、由々しき事態ですよ。
埴安神 袿姫:
そんなの、簡単に解決できるわ。出来の悪い
部下を木っ端みじんにして、作り直してあげる!
杖刀偶 磨弓:
えっ!? そ、それはちょっと……!
あの、指揮官の私にも、責任はありますから!
埴安神 袿姫:
あら、ダメ? でも部下を変えられないなら、
貴方が変わるしかないわよ。……違う存在にね。
杖刀偶 磨弓:
ち、違う存在……!?
それって、なんですか?
埴安神 袿姫:
アイドルよ!
皆に好かれる、偶像になりなさい!
埴安神 袿姫:
古今東西、数々の指導者が、自身を美化して
下々の者に威光を示してきたわ。
杖刀偶 磨弓:
なるほど。私もそれに倣えと……!
でも、アイドルですか? 私、自信ないですよ!
埴安神 袿姫:
安心して。私がプロデュースしてあげる。
いろいろ準備をしてくるから、待ってなさい。
埴安神 袿姫:
さあ、アイドルに必要なアイテムを、
いろいろ作ってきたわよ。
埴安神 袿姫:
まずはこの服を着てみて! セラミックスの
アイドル衣装よ。フリフリがかわいいでしょう?
杖刀偶 磨弓:
うう……。着ているところを想像すると、
心がムズムズしてきます……。
埴安神 袿姫:
素敵なアイテムは、これだけじゃないわ。
じゃじゃーん!
杖刀偶 磨弓:
きゃあっ! 私がいっぱいいる!
これ、人形ですか!?
埴安神 袿姫:
この等身大磨弓人形を、部下たちに配りなさい。
忠誠心が高まること、間違いなしよ。
杖刀偶 磨弓:
なんか、落ち着かないなあ……。あれ?
お腹にボタンがついてる。ポチッとな。
磨弓人形:
みんなのアイドル、まゆみんでーす♪
貴方のハートを、キャッチしちゃうぞ~♡
杖刀偶 磨弓:
うわあああ! なんか変なことをしゃべったー!
埴安神 袿姫:
河童の技術を流用したの。毎日声を聞かせれば、
みんなが貴方の大ファンになるわ!
杖刀偶 磨弓:
こ、こんなかわいいことを、私が言うの……!?
ム……ムリムリムリ! 絶対ムリです!
埴安神 袿姫:
ああっ! 私の自信作がー!?
なんてことするのよー。
杖刀偶 磨弓:
ご、ごめんなさい! でもこれは恥ずかしすぎます!
やっぱり私、アイドルなんてムリです!
埴安神 袿姫:
実戦を積めば、そのうち慣れるわよ。実はもう
ギャラリーを呼んであるから、歌ってみなさい!
杖刀偶 磨弓:
きゃああああ! い、いつの間に~! 袿姫様、
そのご命令だけは、背かせていただきます!