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妖怪の山
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驪駒 早鬼:
おお、まさかこんな場所でお前に遭うなんて!
奇遇だな、吉弔!
吉弔 八千慧:
まったく……嬉しくない偶然ですね。
なぜ、ここに? その大量の荷物は?
驪駒 早鬼:
建設資材だ。事務所の地上支部を作るためのな。
良い場所が見つかるといいんだが。
吉弔 八千慧:
事務所の地上支部……。
狙いが貴方と被るなんて、一生の不覚です。
哨戒天狗:
おい、お前たち、何者だ!
ここは我々、天狗が治める土地だぞ!
哨戒天狗:
大量の荷物を抱えた怪しいヤツらめ……。
今すぐ追い出してくれる!
驪駒 早鬼:
お? なんだ、やる気か?
血の気が多くて結構だねえ!
驪駒 早鬼:
地上に住む妖怪の強さ、
この勁牙組組長、驪駒早鬼に見せてみろ!
哨戒天狗:
勁牙組……?
たしか、畜生界の動物霊の一派だったか。
哨戒天狗:
お前たち、まさか地上に侵攻を!?
いかん、すぐに大天狗様にお伝えしなければ!
吉弔 八千慧:
……はぁ。少し落ち着いてください。
誤解が生じています。
吉弔 八千慧:
地上に侵攻など、とんでもない。私たちは、
大天狗様と宴会の約束があって来ただけです。
吉弔 八千慧:
ですから貴方たちは、我々のことなど気にせず
ご自分の職務に戻るといい。そうでしょう?
驪駒 早鬼:
(吉弔のヤツ、天狗を言いくるめるつもりか。
さすが、こういうときは頭が回るな)
哨戒天狗:
あ、ああ。そうだな。でも、ちょっと待っててくれ。
念のため、大天狗様に確認を取ってみる。
吉弔 八千慧:
ああ、そうだ。今日の宴会ですが、
準備はこちらの驪駒が率いる勁牙組にお任せを。
吉弔 八千慧:
その資材は、余興のために持ってきたものです。
どうぞ、こき使ってやってください。
驪駒 早鬼:
はぁ!? お、お前、いったい何を……、
吉弔 八千慧:
ふん、畜生界の掟は弱肉強食。
では、私は失礼いたします。
驪駒 早鬼:
お、おい、待て……。
哨戒天狗:
なに、そんな予定は入っていないだと!?
お前ら、私を謀ったな! 至急応援を呼べ!
驪駒 早鬼:
アイツ、私をエサにして
自分だけ先に逃げやがったのか!
驪駒 早鬼:
くっ……覚えていろよ!
次に会ったら、力は私が上だと証明してやる!