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鬼渡の関所
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驪駒 早鬼:
はっはっは! さあ、誰でもかかってくるがいい!
この地獄の門番が相手をしてやろう!
庭渡 久侘歌:
なっ…………。何をしているんですかーー!?
驪駒 早鬼:
おお、来たか番頭神。出勤ご苦労。
驪駒 早鬼:
ちょっと地獄の門番ってのをやってみたくてね。
そこにいたヤツに頼んで、代わってもらったんだ。
庭渡 久侘歌:
頼んでって……倒れてるじゃないですか!
庭渡 久侘歌:
ああもう……。そもそも、
なんで、ここの門番がやりたいんです?
驪駒 早鬼:
以前、博麗の巫女たちが畜生界に来たときは、
お前のいた関所を通ってきたんだろう?
驪駒 早鬼:
だったら、ここにいれば、アイツらみたいな
骨のある奴と、たくさん戦えそうじゃないか!
庭渡 久侘歌:
た、たしかに、
時には荒事が起きることもありますけれど……。
庭渡 久侘歌:
ここは、地獄の秩序を守るための場所。
荒くれ者の好きにはさせませんよ!
驪駒 早鬼:
何も関所を明け渡せって言ってるわけじゃない。
今日だけでいいんだ、門番をやらせてくれよ。
庭渡 久侘歌:
(……それで満足して帰ってくれるなら、
手伝わせてみるのもありかしら)
庭渡 久侘歌:
わかりました。では、手伝いをお願いします。
くれぐれも、私の目の届く場所にいてくださいね!
驪駒 早鬼:
よ~し、任せておけ!
勁牙組組長の力を見せてやろう!
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その日の暮れ・鬼渡の関所
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驪駒 早鬼:
おい……。ホネのある奴どころか、
なんのトラブルも起きないじゃないか!
庭渡 久侘歌:
お、おかしいですね。
普段は、もっといろいろと起こるのですが……はっ!
庭渡 久侘歌:
(そっか、この人がいるからだ! 乱暴者の
勁牙組組長の前では揉め事を起こせないから……)
驪駒 早鬼:
おい、なんで急に黙り込むんだ。
庭渡 久侘歌:
(もしかして、この人に番頭を任せれば、
一日お休みをもらうこともできる……?)
庭渡 久侘歌:
(そういえば、妖怪の山の裏手に湧いたっていう
新しい温泉、行ってみたかったんだよなあ……)
庭渡 久侘歌:
……あら? 組長さんはどこに?
驪駒 早鬼:
おい、お前。私と戦わないか?
死ぬほど暇なんだよ。
かわいそうな幽霊:
ひっ……ひええええっ!
もう死んでるけど、お命だけは~~!
庭渡 久侘歌:
わ……、わ~っ!? ダメですダメです!
番頭が、自分からケンカなんて売ったら!
驪駒 早鬼:
なに、心配せずとも誰も通さないさ。
勁牙組組長の力、そこで見ているがいい!
庭渡 久侘歌:
そ、そういうことじゃなくて! あーもう!
どんどん問題を起こさないでくださーい!
庭渡 久侘歌:
うぅ、番頭を任せるなんて、絶対に無理だわ。
温泉でのんびりできる日は、遠そうね……。