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人間の里
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村紗 水蜜:
砂糖に味噌に……よし、これで買い出しは終わり。
結構時間かかっちゃったわ。早く帰らないと。
村紗 水蜜:
あいたっ!? す、すみません、ぶつかって!
急いでいたもので……、って。
村紗 水蜜:
あ、あのー。
なぜ、こちらをじっと見てるんですか……?
西行寺 幽々子:
なるほど、舟幽霊……。水に関わる妖怪だし、
幽霊だから、冥界の環境にも充分適性があるわね。
河城 にとり:
たしか、仏門の徒って話だったよな。
だったら、勤務態度も信用できそう……。
村紗 水蜜:
ちょ、ちょっと待ってください。
適正とか勤務態度とかって、なんの話ですか?
西行寺 幽々子:
あなた、合格よ!
河城 にとり:
我々は、君のような人材を探していた!
村紗 水蜜:
へっ!?
西行寺 幽々子:
実はこの夏、河童と協力して、
冥界にプールを作ろうと思ってるの。
西行寺 幽々子:
それで、プールの監視員を探してたんだけど、
あなた舟幽霊でしょ? ぴったりじゃない!
村紗 水蜜:
いやいや……。だったら、それこそ、
そこの河童に頼めばいいのでは?
河城 にとり:
こっちは売店で手一杯さ。
だから、あんたに頼みたいってわけ。
河城 にとり:
どう? 今なら高待遇を約束するよ!
村紗 水蜜:
……申し訳ありませんが、お断りします。
寺や遊覧船の仕事もありますし。
村紗 水蜜:
というか、冥界のような幽霊の多い場所に
水辺を作るなんて、やめた方がいいですよ?
河城 にとり:
あん? どういうこと?
村紗 水蜜:
幽霊は、加減を知りませんから。居心地のいい
水辺があったら、きっと人を引きずり込みます。
村紗 水蜜:
それこそ、冥界の管理者のあなたなら、
よくわかってると思いますが?
西行寺 幽々子:
もちろん。だから監視員を探しているのだし、
なにかあっても、ちゃんと私がどうにかします。
村紗 水蜜:
そんな簡単に……。策があるならいいですけど、
私は忠告しましたからね。
西行寺 幽々子:
ええ、ありがとう。それじゃあ私たちは、
また監視員さんを探しに行きましょうか。
河城 にとり:
そうだね。どんどん人を集めていかないと、
プールの完成に間に合わないからなー。
村紗 水蜜:
冥界でプール……。
うーん。本当に大丈夫なのかしら……。
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聖輦船
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聖 白蓮:
なるほど……。それで、戻って来てから、
ずっとソワソワしてたのね。
村紗 水蜜:
ええ。なんだか気になっちゃって。
冥界でプールなんて、絶対に危ないのに。
聖 白蓮:
そんなに気になるのなら、いっそのこと
監視の仕事を引き受けてみてはどうかしら?
村紗 水蜜:
……え? ですが……。
聖 白蓮:
納涼のお祭りは、人々の娯楽として大切よ。
その施設は、きっとそういう目的なのでしょう?
聖 白蓮:
それに、自分が危険だと気がついているのなら、
手助けしないと後悔すると思いますよ。
村紗 水蜜:
聖……。そうですよね。
私、プールの監視員、やってみます!
古明地 こいし:
はーい! 話は、しっかり聞きました!
私も私も! プールに行きたい!
聖 白蓮:
こいしさん。あなたは、これから修行が……。
いえ、逆にいい機会かしら?
聖 白蓮:
他人と関わることも、また修行となるでしょう。
村紗と一緒に、プールに行ってもらえますか?
古明地 こいし:
やったー! うふふ、楽しみだな~!
聖 白蓮:
こら、遊びにいくのではありませんよ?
あくまで修行の一環として、仕事を手伝うのです。
古明地 こいし:
ええー!? 遊べないのー?
それじゃ、プールに行く意味ないよー。
村紗 水蜜:
あ、でもプールを閉めた後だったら、
従業員が使ってもいいんじゃないでしょうか?
村紗 水蜜:
まあ、河童たちの許可が下りたらですけど……。
もしかしたら、貸し切りで遊べるかもしれませんよ。
古明地 こいし:
ほんと!? じゃあ一緒にお願いしよう!
約束ね。お仕事して、プールだ、プール!
村紗 水蜜:
監視しないといけない相手が
一人増えてしまいましたね……。監視員として。
聖 白蓮:
私も後で様子を見に行くから、
なにかあったら、よろしくね?
村紗 水蜜:
わかりました。
では、行ってまいります!