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冥界プール
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河城 にとり:
いやー、一時はどうなるかと思ったけど、
ちゃんとプールが開けて、なによりだ。
河城 にとり:
売店も結構忙しかったし、もうしばらく
ボートの上で、ひと休み~っと……。
河城 にとり:
あれ? そういえば、そこの監視員席、
誰もいないけど、どこ行った……うわっ!?
河城 にとり:
ぷはっ!? な、なんだ!?
急にプールに突き落とされたぞ。また幽霊か!?
村紗 水蜜:
いいえ、私です。今はプールの休憩時間中ですよ。
早く水から上がってください。
河城 にとり:
注意するなら、口で言えばよかったじゃんか!?
なんで、わざわざ水に落とすんだ!
村紗 水蜜:
その方が、身に染みるじゃないですか。
あ、そろそろ休憩終わりですね。失礼します。
河城 にとり:
あいつ、もしかして客に対しても
あんなことしてるんじゃないだろうな……。
河城 にとり:
ちょっと様子を見にいくか。
プールの評判が落ちたら、私が困るからな!
プール客A:
きゃあ!?
村紗 水蜜:
そこ、飛び込みは禁止ですよ!
今みたいに足を滑らせたら危険です!
プール客B:
なんだ!? ボートが傾いて……、うわあ!?
村紗 水蜜:
ボートの上で跳ばない! こうやって、
急にひっくり返ることもあるんですよ!
河城 にとり:
ああっ!? あいつ、やっぱりやってたな!
おい、ちょっと! ストップストップ!
村紗 水蜜:
おや? どうかしましたか?
河城 にとり:
あんた、注意って言いながら
客をプールに沈めまくってるけどさ……。
河城 にとり:
もしかして、人を沈めるの楽しんでないか?
村紗 水蜜:
え……? い、いや、そんなことは。
河城 にとり:
本当にないって言い切れるの?
このまま監視員を任せていいか不安だよ。
村紗 水蜜:
だ、大丈夫です! 大丈夫ですが……。
すみません。すこし頭を冷やしてきます……。
河城 にとり:
本当に大丈夫かなぁ。一応、私もこのまま
ボートで見回りしとくか……、うわっ!?
河城 にとり:
ボ、ボートが沈む! なんでこんなに水が入って
……って、これ舟幽霊の手口じゃないか!?
河城 にとり:
あいつ、話してる間に水入れやがったな!
やっぱり全然ダメじゃんかー!
村紗 水蜜:
彼女の言うことは正しい……。
今の私は、人を沈めて喜ぶ幽霊たちと同じだわ。
村紗 水蜜:
でも聞こえてくるの。水底から幽霊の声が……。
もっと沈めたいと。私も、そうしたい……!
古明地 こいし:
あ、こんな所にいたー。
ちょっと来てほしいんだけど。
村紗 水蜜:
……ん? あぁ、また誰か溺れたんですか?
古明地 こいし:
違うの。なんかね、さっき貴方に沈められた人が、
もう一回沈めてほしいって言ってたんだ。
村紗 水蜜:
……はい?
古明地 こいし:
注意されたことは謝ってたけど、
沈められたのが、すごく楽しかったんだって!
村紗 水蜜:
はは、あっははは……! そっか、いいんだ。
私は、もっとやっていいんだ!
古明地 こいし:
わあ!? なんか、やる気満々?
村紗 水蜜:
ああ、人が沈んでいく!
船と一緒に、驚きながら落ちていく!
河城 にとり:
おいこら、監視員! 手当たり次第に
水難事故を起こして、客を沈めるのはやめろ!
村紗 水蜜:
楽しい……。すれ違いざまに水を注ぎ、
気づかないうちにドボン! これぞ王道!
河城 にとり:
聞こえてないのか? それに、なんか……
あいつの周りに、幽霊がどんどん集まってる!?
河城 にとり:
……早く止めないとヤバそうな感じ。
おーい、スタッフ! 緊急集合だ~っ!
村紗 水蜜:
そう、私は舟幽霊。思うがまま、
何もかもを沈める舟幽霊よ……!