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永遠亭
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蓬莱山 輝夜:
はぁぁ……。だめだなあ。
な~んにも、やる気が出ない~。
八意 永琳:
輝夜、どうしたの? このところ、
ずっと外にも出ずに、ため息ばかりじゃない。
蓬莱山 輝夜:
どうにも気持ちがふさいじゃってねぇ。
ひと足遅い夏バテかしら。
八意 永琳:
ふふ、蓬莱人の貴方が夏バテ?
病気なんて無縁のはずなのに。
蓬莱山 輝夜:
もう、からかわないで。
こういうのは気持ちの問題なの!
八意 永琳:
はいはい。あ、そうだ。やる気が出ないなら、
やる気の出る薬でも作りましょうか?
蓬莱山 輝夜:
そんな怪しい薬、飲みたくないわよー。
あーあ、何か楽しいことないかなあ。
八意 永琳:
楽しいことねえ……。
八意 永琳:
あ、そうだ。もうすぐ十五夜だから、
あれがあるじゃない。
八意 永琳:
例月祭。月の罪人である私たちの罪を償うため、
満月のときに行うお祭り。
蓬莱山 輝夜:
でも、あれって兎たちが餅をついたり、
団子をお供えしたりするだけじゃない。
蓬莱山 輝夜:
私は、あまりやることないし、
そんなに大きなお祭りでもないしねぇ……。
八意 永琳:
ちょっと趣向を変えてみるのは、どうかしら?
兎たちに芸をさせたり、料理を豪華にしたり……。
蓬莱山 輝夜:
……たくさん人を招待して、
賑やかなお祭りにしちゃったり?
蓬莱山 輝夜:
いいじゃない、それ! よーし。
今回の例月祭は、みんなを集めてお月見祭りよ!
蓬莱山 輝夜:
そうとなれば、準備を始めなきゃ。
鈴仙! ちょっと、こっちに来てー!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
はーい。お呼びですか?
蓬莱山 輝夜:
例月祭に向けて、幻想郷中に招待状を出すわ。
配ってきてくれるかしら?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
え? あ、はい。我ら兎に、お任せください!
蓬莱山 輝夜:
それから……。あ、そうだ。招待客には、
月に見立てた丸い物を持ってきてもらいましょう。
八意 永琳:
一応、例月祭だものね。
それじゃ、お酒と料理の手配は私がやるわ。
蓬莱山 輝夜:
鈴仙、あっちで招待状の文面を考えましょう。
たくさん人が来てもらえるようにしないと……。
八意 永琳:
やれやれ……。忙しくなりそうね。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
わあ……! 大盛況ですね、姫様!
霊夢たちはもちろん、亡霊や鬼まで来てます!
蓬莱山 輝夜:
招待状を練りに練った甲斐があったわね!
お供え物も、きちんと持ってきてるみたいだし?
蓬莱山 輝夜:
……ねえ、鈴仙。この、車輪にテープが
巻き付いたような物体はなんだと思う?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
さあ……。こっちの星座ごとに細い穴が空いた
置物も、いったいなんなんでしょう?
蓬莱山 輝夜:
このレバーで動作するのかしら……。って、もう!
丸い物とは言ったけど、みんなテキトーすぎよ!
蓬莱山 輝夜:
こんなの、どうやったら月に見立てられるのよ。
遠目に見ても丸くないじゃない!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
あはは……。でも色んな物が集まったからか、
皆さん楽しんでるみたいですよ。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
ほら、あっちの方では、お酒を飲みながら
お供え物の品評会が始まってますし。
蓬莱山 輝夜:
うーん、まあ酒の肴になってるのなら、いいか。
あとは、盛り上がる余興でもほしいところね。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
まあまあ。お月見祭りなんですから、
真ん丸のお月様さえあれば……って、あれ?
蓬莱山 輝夜:
ん、どうしたの鈴仙?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
ひ、姫様! 空を見てください!
月が、月が……!
蓬莱山 輝夜:
なに? 月がどうしたって……、
え、えええっ!?
蓬莱山 輝夜:
さっきまでは確かに出ていたのに……。
満月が……月が……。
蓬莱山 輝夜:
き、消えた……!?