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永遠亭の庭
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蓬莱山 輝夜:
そんな……、空に、彷徨月しかないわ。
満月が消えるなんて、どういうこと?
蓬莱山 輝夜:
雲なんて一つも出ていないし、
まだ月が沈むような時間でもないのに!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
わ、わかりません……!
八意 永琳:
姫!鈴仙!
蓬莱山 輝夜:
永琳! 空は見たわね?
いったい何が起きているの?
八意 永琳:
私にもまだ……本当なら月は今頃、東南東の方向、
高度約30度の位置にあるはずなのですが。
八意 永琳:
自然現象でないことは確かです。
いったいどうして……ん? このガラクタの山は?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
招待客が持ってきてくれた、お供え物です。
妙な物も多いんですが……。
八意 永琳:
お供え物……? そうか、しまった!
蓬莱山 輝夜:
え、なに? どうしたの!?
八意 永琳:
姫。月は、消えたわけではありません。
はるか彼方に遠ざかってしまったようです。
蓬莱山 輝夜:
はるか彼方に……?
八意 永琳:
はい。例月祭は、丸い物を月に見立てて
月を遠ざける儀式という側面があります。
八意 永琳:
お供え物を月に見立てることで、磁石の
同極同士のように反発させるのですが……。
蓬莱山 輝夜:
それじゃまさか、こんなにお供え物が集まったから
月がはるか彼方に遠ざかってしまったの?
八意 永琳:
おそらくは……。そしてこのままでは、
いずれ月は永遠に失われてしまうことでしょう。
蓬莱山 輝夜:
……つまり、これは私のせいね。
八意 永琳:
そんな! ……ごめんなさい。
私が事前に気づいて止めていれば……。
蓬莱山 輝夜:
いいえ。例月祭の規模を大きくしたのは、
私だもの。責任は、私にあるわ。
蓬莱山 輝夜:
月を失ってしまうわけにはいかない。
永琳、月を元に戻す方法を考えて!
八意 永琳:
そうね……。さっき説明したとおり、
この儀式は磁石のような性質を利用しているわ。
八意 永琳:
つまり、その性質を反転させる儀式を行えばいい。
今の儀式構成から考えれば……あの文献に……。
八意 永琳:
一度、情報をまとめてくるわ。ただ……
輝夜。貴方にも動いてもらう必要があるかも。
蓬莱山 輝夜:
ええ、この非常時でしょ。承知の上だわ。
八意 永琳:
じゃあ、少し待ってて。すぐに戻るわ。
八意 永琳:
お待たせ、二人とも。
月を元に戻す方法がわかったわ。
八意 永琳:
例月祭は、団子を月に見立てて月を遠ざける儀式。
その性質を反転させるには……。
八意 永琳:
月を団子に見立ててやればいいのよ。
蓬莱山 輝夜:
月を団子に見立てるですって?
それで、私は何をすればいいの?
八意 永琳:
ええ。幻想郷で霊性の強い5つの場所に、
これをお供えしてきてちょうだい。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
これは……、お皿に盛った月見団子?
一番上のが、一つ足らないみたいですけど。
八意 永琳:
本来なら15個の団子で、きれいな山に
するのだけど、あえて一つ減らしているの。
八意 永琳:
その欠けた一つは、空の月。
つまり、月を15個目の団子に見立てるのよ。
蓬莱山 輝夜:
なるほどね……。
八意 永琳:
お供えする場所は、守矢神社に博麗神社、
地霊殿に、妖怪の山。一番最後に、ここ永遠亭よ。
八意 永琳:
ただ供えるだけじゃ駄目。お供え物の前で、
月見試合という儀式をする必要があるわ。
八意 永琳:
月見試合には、各地の管理人の協力が必要なの。
そこで……鈴仙、この手紙を。
八意 永琳:
手紙には、事情説明と儀式の詳細が書いてあるわ。
管理人に渡せば、きっと協力してくれるはず。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
わかりました! 任せてください。
蓬莱山 輝夜:
よし! それじゃ行くわよ、鈴仙!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
は、はい! お師匠様、行ってきます!
八意 永琳:
頼んだわよ、二人とも!
……どうか、上手くやってちょうだいね。