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永遠亭
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蓬莱山 輝夜:
月を近づけるのが、永琳の目的だった……?
いったい、どういうことなのよ!
八意 永琳:
ええ、説明してあげる。そもそも、
月が消えたのは、鈴仙が見せた幻覚だったの。
八意 永琳:
だから、別に月は遠くに行ってなかったのよ。
それなのに、貴方は……。
蓬莱山 輝夜:
……より近づける儀式をしてしまったのね。
月は、そこにあったのに。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
で、ですが、お師匠様。あの月見試合は、
形式だけの嘘の儀式と言ってたじゃないですか。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
輝夜様が永遠亭に戻ってきたら幻覚を解いて、
いつものお月様を見ながら、お月見をするって!
八意 永琳:
悪いわね。あの儀式は本物だったの。
この空を覆う巨大な月が、なによりの証拠よ。
蓬莱山 輝夜:
いったい、どうしてこんなことを?
幻想郷に月を近づけて、何がしたいのよ!
八意 永琳:
……実験よ。最近試作した新薬の中に、
ちょっと面白い効能が出たものがあったの。
八意 永琳:
そう……。服用した者を、
一定時間意のままに操れる……っていうね。
蓬莱山 輝夜:
……は?
八意 永琳:
研究していくうちに、その効能は、
月の狂気を浴びるほど高まることがわかったの。
蓬莱山 輝夜:
まさかとは思うけど……。
あなた、その薬のために月を近づけたというの?
八意 永琳:
ええ。一種の麻酔としても使えるから、
治療もしやすくなるしね。それに……
八意 永琳:
この薬があれば、幻想郷を支配することだって、
できちゃいそうだし?
蓬莱山 輝夜:
はあ……!? バカなこと言ってないで、
早く月を元に戻しなさい!
八意 永琳:
そうね、元に戻してあげてもいいわ。
八意 永琳:
なぜなら、薬はもう十分できたのだから!!
妖怪たち:
うおおおおおおお!
蓬莱山 輝夜:
例月祭の参加者たち!? どうしてこんなに
殺気立って……。まさか貴方、料理に薬を?
八意 永琳:
そう。この妖怪たちは、もう私の言いなり。
さあ、こらしめてあげなさい!!
妖怪たち:
うがあああ!!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
きゃあああ~っ!
蓬莱山 輝夜:
あっ、鈴仙が吹っ飛ばされた!? この……っ!
もう! こっちは疲れてるっていうのに!
蓬莱山 輝夜:
たあっ! やあっ! くっ、なんなのよ!
こいつら、楽しそうに……!
八意 永琳:
よく頑張ること……。
そろそろ、楽になった方がいいんじゃない?
妖怪たち:
はっはっは! そうだ、観念しちゃえよ~!!
蓬莱山 輝夜:
絶対おかしい! 薬で操られているはずなのに、
こいつら、意識がはっきりしすぎてる!
蓬莱山 輝夜:
ということは……、そういうことよね。
やっぱり……!
妖怪たち:
何をブツブツ言ってる?
そうら、とどめだ!!
蓬莱山 輝夜:
……もういいでしょう!
いい加減に助けなさい、永琳!!
八意 永琳:
はい、姫様。
妖怪たち:
……え?
八意 永琳:
皆さん、ここまでご協力ありがとう。
私もひと暴れしたいから、最後まで付き合ってね?
八意 永琳:
さあ、やるわよ輝夜!
輝夜・永琳:
やあっ!
妖怪たち:
は、話が違う~!!
蓬莱山 輝夜:
……ふう。やっぱり、
全部、貴方の手のひらの上だったってわけね。
八意 永琳:
ええ。バレちゃったなら、
もうこの術もいらないわね。それっ!
蓬莱山 輝夜:
ええっ!? 空が割れて、
いつもの月が出てきた……。
八意 永琳:
さっきは、ああ言ったけどね。
月見試合は、本当に嘘の儀式だったのよ。
八意 永琳:
実は、私が本物の夜空を隠して、
月を大きく見せかけていただけだったの。
八意 永琳:
今度こそ、全部説明するわ。
でもその前に、お月見祭りを再開しましょうか。