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永遠亭の庭のはずれ
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蓬莱山 輝夜:
良い料理とお酒を振る舞ったら、
みんな機嫌が直ったみたいね。現金なこと。
蓬莱山 輝夜:
さあ、それじゃ話してもらいましょうか。
私をだまして、こんなことをした理由をね。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
そうですよ、お師匠様!
私にも説明してください!
八意 永琳:
ごめんなさいね。悪気があったわけじゃないの。
このところ、輝夜は引きこもりがちだったでしょ?
八意 永琳:
だから、思いっきり外に出て
身体を動かせることを企画したのよ。
八意 永琳:
十五夜も近かったし、例月祭を利用してね。
宴会になれば、貴方は人を集めると思って。
蓬莱山 輝夜:
……まあ、大勢での宴会は好きだからね。
八意 永琳:
そして、自分の行動が原因で異変が起これば、
輝夜はきっと自分から動き出すと信じていたわ。
八意 永琳:
だから、鈴仙の協力で月が消えたと見せかけ、
月見試合という嘘の儀式をしてもらった。
八意 永琳:
鈴仙に持たせた手紙には、貴方をだます
計画ってことまで書いてあったわ。
蓬莱山 輝夜:
あら? 途中で中身を読んだけど、
怪しいことは何も書いてなかったわよ?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
実は、姫様なら、そうするだろうからって、
偽の手紙も持たされまして……。
蓬莱山 輝夜:
む。なんでもお見通しってわけね。
八意 永琳:
お供えの月見団子は、協力者への報酬でね。
また後で、お酒も届ける予定なのよ。
蓬莱山 輝夜:
どうりで、急なお願いの割には
みんな協力的だと思ったのよねえ。
八意 永琳:
それから……、あの月見試合は全部、
地上の人間が月見を楽しむためにする行事なのよ。
蓬莱山 輝夜:
ええ!? あのモグラ叩きとか、相撲とかが?
地上の人間って、よくわからないわねえ。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
あれ? じゃあ、お師匠様との弾幕勝負も?
八意 永琳:
いいえ? あれは、私がやってみたかっただけ。
蓬莱山 輝夜:
あ、そう……。まあ私も、
久々に貴方と全力で遊べて、楽しかったけどね。
八意 永琳:
それで、その弾幕勝負の前に、
月を大きく見せる術の準備を済ませて……。
八意 永琳:
そして、操られた演技をしてくれるように、
参加者たちと口裏を合わせていたってわけ。
八意 永琳:
そのことは鈴仙に伝えてなかったから、
驚かせちゃったわね。ごめんなさい。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
本当にビックリしましたよ……。
攻撃は手加減してくれてたみたいですけど。
八意 永琳:
まあ、鬼たちみたいに強い妖怪は、抜けていたしね。
……というのが、今回の計画の全貌でした。
蓬莱山 輝夜:
なーるほどね。たったそれだけで、
私からは大騒動に見えちゃったわけかあ。
八意 永琳:
どうですか?
久しぶりに思いっきり動いてみた感想は。
蓬莱山 輝夜:
そうね……すっごく疲れたけど、楽しかったわ。
こうして飲むお酒も美味しいしね。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
あ、そろそろ徳利が空きそうですね。
新しいのを取ってきます!
蓬莱山 輝夜:
……でも、最初に月が消えてしまったときは
本当に心配したのよ。
八意 永琳:
たしかに、あの時の輝夜は、
私が予想していた以上に真剣だったわね。
八意 永琳:
少し、驚いたわ。
月には、嫌な思い出だってあるでしょう?
蓬莱山 輝夜:
そりゃあね。でもほら、こうやって
楽しい月見ができなくなるのも寂しいじゃない。
八意 永琳:
ふふ、そうね。
蓬莱山 輝夜:
それに……どんな過去があったとしても、
月が私たちの故郷であることに変わりはない。
蓬莱山 輝夜:
たとえもう二度と帰らないとしても、
懐かしくて愛しい、我が故郷……。
蓬莱山 輝夜:
ずっと変わらず、そこにあってほしいじゃない?
八意 永琳:
……ええ、その通りね。