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妖怪の山
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射命丸 文:
遅いですねえ……。
約束の時間は、とうに過ぎているのですが。
古明地 さとり:
ああ、やっぱり。きっと天狗がいると思った。
射命丸 文:
さとりさん?
どうして、あなたがここに……。
古明地 さとり:
この写真に、時間と場所が書かれていたから。
貴方が、こいしに渡したんでしょう?
古明地 さとり:
今は無駄話をしている暇はありません。
いいから、ついてきて。
射命丸 文:
待ってください。状況が読めないんですけど、
……まさか、こいしさんに何か!?
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地霊殿
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射命丸 文:
……な、なんですか? この、ガラクタが
集まってできたような、大きな球体は。
古明地 さとり:
おそらくですが、こいしが集めていた宝物が
寄せ集まったものだと思います。
古明地 さとり:
あの子の宝物には、魔力や霊力を帯びた物が
多かったから、それがこいしの力と反応して……。
射命丸 文:
集まって、こんなガラクタボールになったと。
なるほど……。
射命丸 文:
それより、こいしさんは?
彼女に何かあったんじゃないんですか?
古明地 さとり:
それが……。どうやら、
あの中に閉じ込められているみたいなの。
古明地 さとり:
呼びかけても反応がないから、
早く壊して、助け出したいのだけど……。
射命丸 文:
あやややっ!? あのガラクタボール、
レーザーで攻撃してきましたよ!?
古明地 さとり:
ええ。心も読めないから、対処が難しくて。
手伝ってもらうために、あなたを呼んだのよ。
射命丸 文:
そういうことでしたか。
では、さっさと助けましょう!
射命丸 文:
はっ! せい! くらえー!
おお、我ながらいい攻撃が入りました。……ん?
射命丸 文:
今、ガラクタボールから何か落ちたような……。
あれって、まさか昨日の宝玉じゃ?
古明地 さとり:
なに!? 急に攻撃が変わった!?
細長い光線が、ムチのようにしなって……!
射命丸 文:
なかなか素早い動きですね。でも、その程度じゃ
幻想郷最速の鴉天狗は捕らえられませんよ!
射命丸 文:
いや、驚きました。どうやら、この球体は
物が落ちるたびに攻撃手段が変わるようですね。
射命丸 文:
最初はレーザーでしたけど、宝玉が落ちたら
細長い光線でのムチのような攻撃に。
射命丸 文:
機械の部品が落ちれば、飛び回る弾の群れに。
鳥の羽が落ちれば、無数の跳ねる極小の弾……あれ?
古明地 さとり:
……ああ、そう。あれは、取材旅行で
あの子が見てきた光景を模しているのね。
古明地 さとり:
空を駆ける鳥、湖で踊る妖精……。
きっと、とても楽しかったのでしょうね。
射命丸 文:
……楽しんでもらえたようで、よかったです。
私にとっても、いい取材になりましたし。
射命丸 文:
「古明地こいし、新たなスペルカードを披露!?」
なーんて記事も書けそうですしね! とりゃあ!
古明地 さとり:
今度は、何かの種が落ちたわね。
……って、え?
射命丸 文:
ガラクタボールが、動きを止めた……。
射命丸 文:
よくわかりませんがチャンスです! ガラクタを
引っぺがして、こいしさんを救出しましょう!
古明地 さとり:
え、ええ!
射命丸 文:
よっ、と! これは柄杓ですね。こっちは着物。
これは頑丈な扉……って、なんでこんなものを。
射命丸 文:
とにかく引きはがしましょう。
よいしょ、っと! ……あ!
古明地 こいし:
……天狗さん? お姉ちゃん?
古明地 さとり:
こいし! やっぱり、この中にいたのね。
ああ、無事でよかった……。
射命丸 文:
まったく、約束の時間に現れないから
心配しましたよ。ほら、行きましょう?
古明地 こいし:
……そっかぁ。
この光、だったんだ……。
射命丸 文:
え。ちょっと、寝ないでくださいよ。
起きて、こいしさーん! ……うん?
射命丸 文:
は? な、なんか、ガラクタボールが
急に光り出して……!? え、ちょ!?
古明地 さとり:
きゃあああっ!? 爆発した!?
射命丸 文:
くぅ、吹き飛ばされる! しかし記者たるもの、
決定的なシーンはカメラに収めておきたい!
古明地 さとり:
悠長ね、貴方! きゃああ~~っ!?
射命丸 文:
さあ、一枚だけ撮りましょう!
目を焼き尽くすような、この爆発の光、を……。
射命丸 文:
……ああ、そうか。
スペルカード「胎児の夢」最後の弾幕は……。
射命丸 文:
あの光は、これだったのかもしれないわね……。