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女王の法廷
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鈴仙・優曇華院・イナバ:
これより、裁判を開廷する。
被告人、宇佐見菫子。前へ!
宇佐見 菫子:
ひ、被告人? どうして?
私、何もしてないよ!?
宇佐見 菫子:
な……、なに?
みんな怖い顔して、どうしちゃったの?
博麗 霊夢:
主文。
被告人に、この世界の住人になることを命ずる。
宇佐見 菫子:
なっ、何を言っているの!?
そんなの、無理に決まってるじゃん!
宇佐見 菫子:
私は、早く夢から覚めたいの!
ここから出してよ!
博麗 霊夢:
そう。それなら、夢から覚めて、
幻想郷からもいなくなりなさい。
宇佐見 菫子:
え? なんで……。
博麗 霊夢:
だって、そうでしょう?
貴方は夢を通して、幻想郷に来ているのだから。
宇佐見 菫子:
じょ……、冗談じゃない! そりゃあ、いつかは
外の世界に帰るべきだって、わかってるけど……。
宇佐見 菫子:
それでも!
今は幻想郷が、私のいるべき場所なのよ!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
なんというワガママ。この世界も幻想郷も、
同じ夢で、違いなどないというのに。
霧雨 魔理沙:
そうだな。夢は幻想、幻想は夢。ここから
去りたいなら、すべての夢から立ち去るべきだ。
宇佐見 菫子:
そんなの……!
パチュリー・ノーレッジ:
この世界の一員にならないのなら、
幻想郷からもいなくなってちょうだい。
因幡 てゐ:
そうだ! さっさと出ていきなさいよ!
宇佐見 菫子:
そんな……、そんなの嫌だ……。
複数の声:
出ていけ! 出ていけ!
幻想郷に、二度と戻ってくるな!
宇佐見 菫子:
やめて……、やめてよ!
お願いだから、私の居場所を奪わないで!!
複数の声:
ぎゃあああ!? なによこれ!?
体が燃えて……、熱い、熱い……!
宇佐見 菫子:
い、いったい何が……?
あれは炎の……鳥? こっちに来る!?
宇佐見 菫子:
うわあああ!? 待って待って、来ないでー!
……って、あれ? 熱く、ない……?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
……こ、さん。……菫子さん!
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永遠亭
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宇佐見 菫子:
ううん……、あ、あれ?
ここは……?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
よかった! 目が覚めたんですね。
すごくうなされていたので、心配しました。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
実は、菫子さんがうなされていると
妹紅が教えてくれて……。
宇佐見 菫子:
え……、あの人が……?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
ええ。でも、すぐに帰っちゃったんです。
心配したなら、声くらいかけていけばいいのに。
宇佐見 菫子:
じゃあ、あの炎の鳥は、もしかして……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
とにかく、おかえりなさい!
夢の国の旅は、いかがでしたか?
宇佐見 菫子:
そっか、私……。
本当にちゃんと帰ってこれたんだ!
宇佐見 菫子:
うわああ! よかった、本当によかったー!
もしかしたら、帰れないかもって思って……っ!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
夢の中で、よっぽど大変な目にあったんですね。
お疲れ様でした。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
……でも、私のときは何もなかったのに。
薬との相性が良すぎたのかしら。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
あ、そうそう。妹紅から、菫子さんに
伝言を預かってるんです。えっと……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
幻想を楽しむのはいいが、染まり切るな。
……だそうです。
宇佐見 菫子:
えっ……?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
貴方は普通の人間として生きられるんだから、
それを大切にしてほしいんですって。
宇佐見 菫子:
幻想に染まり切るな……? どういうこと?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
……まあ、あの人もかつては人間だったので、
何か思うところがあるんでしょう。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
私は、これから師匠に結果の報告をしてきます。
その後、お茶を持ってきますね!
宇佐見 菫子:
……妹紅さん、人間だったんだ。
いったい、何があったんだろう……。
宇佐見 菫子:
うーん、気になる……。気になるけど、
詮索しないほうがいいのかなぁ。
宇佐見 菫子:
まあ、今それは置いといて。とにかく今度、
助けてもらったお礼を言いに行かないとね。
宇佐見 菫子:
それにしても、なんだかんだで楽しかったなぁ。
もう二度と行きたいとは思わないけど……。