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幻想郷・上空
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高麗野 あうん:
あれが香霖堂です。
見たところ、大丈夫そうですね。
少名 針妙丸:
ん? 森の方から、木が倒れるような音が……。
もしかすると、正邪が暴れてるとか?
庭渡 久侘歌:
そうかもしれません。行ってみましょう!
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魔法の森
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森近 霖之助:
はぁ、はぁ……!
なんで、僕がこんなことに……!
高麗野 あうん:
あ、香霖堂の店主さん!
そんな慌てて、どうしたんですか?
森近 霖之助:
いや、それが……。
鬼人 正邪:
そう逃げるなって。
鬼ごっこも、そろそろ飽きてきたぞ?
森近 霖之助:
しまった。追いつかれた……!
庭渡 久侘歌:
天邪鬼! やはり……!
あなたは後ろへ! 私たちで、なんとかします!
鬼人 正邪:
またお前か、桃太郎。
何回来ようが、鬼には勝てやしないぞ。
少名 針妙丸:
そんなの、やってみなきゃわかんないでしょ!
これ以上、あんたに何も奪わせないわ!
鬼人 正邪:
はん! 先に奪ったのは、そっちだろ!
鬼の恨みを思い知れ!
高麗野 あうん:
きゃう!? ダ、ダメです!
やっぱり力が強すぎます……! ひゃああ!
鬼人 正邪:
さて、残るはお前だけだな。
その宝を、差し出してもらおうか?
森近 霖之助:
もう、店の商品は全部渡しただろう……。
これ以上、なにを奪うつもりだい?
鬼人 正邪:
決まっている。
その大事そうに抱えている、おもちゃの犬だよ!
森近 霖之助:
この子は……、ライカは渡せない。この子は
生きているんだ。それを物のようになど……!
鬼人 正邪:
鬼に歯向かうか。
度胸はあるみたいだが……、そらっ!
鬼人 正邪:
この木みたいに、真っ二つになりたくないだろ?
わかったら、さっさと渡せ。
森近 霖之助:
……わかったよ、大人しく従おう。
せめて、大事に扱ってくれよ。
鬼人 正邪:
あっはっは! どうだかなぁ。
ま、ちょっとは考えておいてやるよ!
鬼人 正邪:
さて、ひぃ、ふぅ……。よし、だいぶ集まったな。
ここらで一度、鬼ヶ島に戻るとするか。
少名 針妙丸:
くそー、またやられた!
やっぱり、お供がそろってないとダメかぁ……。
少名 針妙丸:
そういうわけで、そこのあなた!
今日から桃太郎一行に、サル役で入らない!?
森近 霖之助:
……提案が突飛すぎて、
いきなり言われても、訳がわからないんだが。
庭渡 久侘歌:
実は……。
森近 霖之助:
なるほどね。
天邪鬼がユメミタマに憑りつかれて……。
高麗野 あうん:
あいつは、誰かが大事にしている
その人だけの宝物を狙っているんですよ。
森近 霖之助:
だから、店の物を根こそぎ奪っていったのか。
僕にとって大事な物ばかりだったからね。
少名 針妙丸:
でね、正邪を止めるために、桃太郎一行になって、
言い伝えの力を借りて鬼退治をしようってわけ!
森近 霖之助:
なるほど……。よくわかった。
その桃太郎のサル役、僕が引き受けるよ。
森近 霖之助:
僕も、大事な物を取り返したい。
戦う力はないが、それでもよければ協力するよ。
少名 針妙丸:
助かるよ! メンバーが揃うことに
意味があるはず! これで桃太郎一行の完成だ!
庭渡 久侘歌:
では、次に目指すのは鬼ヶ島、でしょうか?
幻想郷に島なんて、ありましたっけ?
少名 針妙丸:
うーん、うーん……。あっ!?
あ、あれ見て! 輝針城の方!
高麗野 あうん:
わうっ!? お城じゃなくて、山が逆さに
浮かんでますよ!? さかさまの鬼ヶ島です!
少名 針妙丸:
わかりやすくていいじゃん!
よーし、待ってろ正邪! 桃太郎が成敗してやる!
森近 霖之助:
あー、意気込んで飛び出したところ、
悪いんだけど……。
高麗野 あうん:
ごめんなさい~!
店主さん、飛べないんでしたっけ!
庭渡 久侘歌:
それじゃ、みんなで抱えて行きましょう!
せーのっ。
森近 霖之助:
いきなり迷惑をかけるね……。しかし、
この格好はさすがに、ちょっと情けないな……。