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幻想郷・上空
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庭渡 久侘歌:
鬼ヶ島に、だいぶ近づいてきましたね。辺りに
暗雲が立ち込めていて、なんだか禍々しいわ……。
高麗野 あうん:
風もどんどん強くなってきてますよぉ……。
店主さんを落とさないようにしないと。
森近 霖之助:
悪いね、運んでもらって……。
君たちのように自由に飛べたらよかったんだが。
少名 針妙丸:
しかし、本当に荒れてきたね。逆様異変の時と
同じで、魔力の嵐が鬼ヶ島を覆ってるみたい。
少名 針妙丸:
たぶん、鬼ヶ島の中心に近づくほど、
風がひどくなっていくよ。ほら、そろそろ……!
庭渡 久侘歌:
なんて暴風……!
身体がバラバラになりそうだわ!
森近 霖之助:
うわわっ!?
ゆ、揺れる! 飛ばされるっ!
高麗野 あうん:
か、風に、店主さんが持ってかれちゃう……!
……うぅ、ごめんなさい! もう限界です!
森近 霖之助:
そんなっ。僕の言えたことじゃないが、頼む!
もう少し持ちこたえて……、うわあああ~っ!
少名 針妙丸:
やばい! 店主さんが風に流されちゃう!
ここは、この釣り竿で……とどけーっ!
少名 針妙丸:
やった! 釣り針が引っかかった!
……あっ、ダメだ! 私も引っ張られる!?
森近 霖之助:
何してるんだ、君は~っ!?
少名 針妙丸:
ぎゃー! 目が回るぅー!
庭渡 久侘歌:
店主さん、桃太郎さん!?
だめ、私たちも風に……きゃああああ!?
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鬼ヶ島
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庭渡 久侘歌:
いたた……。あら?
ここはもしかして……、鬼ヶ島でしょうか?
高麗野 あうん:
そうみたいですねぇ……。
でも、ここにいるのは私たちだけみたいです。
庭渡 久侘歌:
桃太郎さん、店主さん……。せめて、
無事に鬼ヶ島に着いているといいのですが。
庭渡 久侘歌:
まずは、二人を探しに行きましょう。
ここは敵の本拠地、仲間と離れ離れでは危険です!
庭渡 久侘歌:
島中あちこち、妖怪ばかりですね……。
みんな、天邪鬼の手下なんでしょうか?
高麗野 あうん:
でも、あんまり強そうな妖怪はいませんね。
よーし、このままあっちを探しましょう!
妖怪A:
うわっ、なんだお前ら!?
高麗野 あうん:
あ、見つかっちゃいました……。
妖怪A:
こ、ここは鬼ヶ島だぞ! 怖い目に
あいたくなければ、す、すぐに出ていけ!
庭渡 久侘歌:
あの、別になにもしませんから、
どうか落ち着いて……。
妖怪A:
だ、大丈夫、やれる。今の俺は強いんだ……!
お、お前ら! 出ていかないと、こうだぞ!
高麗野 あうん:
わひゃあ!? な、なんですか今の!?
一撃で木を折るなんて、これじゃまるで……。
庭渡 久侘歌:
鬼のような怪力……! もしかすると、
天邪鬼から力を与えられたのかもしれません!
妖怪A:
これは俺の力だ。俺が手に入れた、念願の……!
誰にも奪わせないぞ! 出ていけ、侵入者!
庭渡 久侘歌:
ここは、ひとまず逃げましょう!
鬼の力に、二人だけでは太刀打ちできません!
妖怪A:
あっ! 奥に逃げたぞ、待てー!
少名 針妙丸:
檻から出せー! 縄も解けー!
少名 針妙丸:
くそー。この妖怪たちに鬼の怪力がなかったら、
こんな簡単に捕まらなかったのに!
森近 霖之助:
その場で襲われなかっただけ、いいじゃないか。
状況が悪いのは変わりないが……。
森近 霖之助:
なあ、そこの鬼。
僕たちは、いったいどこへ運ばれてるんだ?
料理長:
ん? 調理場に運ぶんだ。
あんたらは食材にしろって、言われててなぁ。
森近 霖之助:
……ありがとう。やっぱり状況は最悪だ。
少名 針妙丸:
やだー! 食べるとこなんかなーい!
キジさん、イヌさん! 助けてーっ!