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鬼ヶ島・内部
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庭渡 久侘歌:
ふう。鬼のような妖怪たちから
なんとか逃げ切りましたね……。
庭渡 久侘歌:
しかし、ずいぶん奥の方まで来てしまったわ。
二人はどこにいるのかしら。
高麗野 あうん:
むっ……? ちょっと待ってください。
くんくん……、こっちから二人のにおいがします!
高麗野 あうん:
でも、いっしょに美味しそうな香りもする……?
二人とも、どこにいるんでしょう?
庭渡 久侘歌:
美味しそうな香り?
……嫌な予感がします。急ぎましょう!
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調理場
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森近 霖之助:
まさか、自分の人生が、
こんなかたちで終わるのだとは……。
少名 針妙丸:
やだー! お味噌汁の具になるのは嫌だー!
庭渡 久侘歌:
二人とも、見つけました! ……って、
なんでお鍋の上に吊るされてるんですかー!?
高麗野 あうん:
ま、待っててください!
燻製になる前に助けますからね!
森近 霖之助:
急いだほうがいい、この場所を管理する妖怪が、
そろそろ戻ってくるはず……!
料理長:
おい、待て! その食材に触るんでねえ!
それは、正邪様に出す大事なもんだ!
庭渡 久侘歌:
彼らは食材ではありません!
料理には使わせませんよ!
高麗野 あうん:
そうです! あんたがどれだけ怪力でも、
こればっかりは負けてあげられないわ!
料理長:
そんな……、頼む! 正邪様に料理を出さないと、
せっかくもらった力を取り上げられちまう!
料理長:
俺たちみんな、初めて強くなれたんだ。ほんとに
弱っちいクズ妖怪だったけど、初めて強く……。
料理長:
ようやく、恥ずかしくねえ自分になれたんだ。
だから頼む! どうか、持ってかねえでくれ!
庭渡 久侘歌:
そ、そう言われても……。では、私が別の食材で
料理を作ります。それで手を打ってください。
庭渡 久侘歌:
とにかく、あの天邪鬼を満足させる、
美味しい料理があればいいのでしょう?
料理長:
そ、そうだけどよ……。他の食材なんて、
豆とか野菜しか……。あ、ニワトリならあんぞ?
庭渡 久侘歌:
ニワトリは止めましょう! 野菜でも、
お肉に似た食べ応えは出せますよ! 約束します!
料理長:
うーん、そこまで言うなら任せるか……。
本当に美味かったら、あれは持ってっていいぞ。
高麗野 あうん:
あのー。ほ、本当に大丈夫でしょうか?
もし失敗でもしたら……。
庭渡 久侘歌:
とにかく、やるしかありません。
ここは私に任せて。なんとかしてみせます!
庭渡 久侘歌:
完成しました。味見をお願いします!
料理長:
そいじゃあ、いただきます。
……こ、これは!?
高麗野 あうん:
ど、どうですか? どうなんですか!?
料理長:
……美味い! これは美味いぞ!
しかも、肉もないのに食べ応えもある!
料理長:
これなら持っていっても、文句は言われねえ!
約束だ。あの二人は、あんたたちのもんだ!
庭渡 久侘歌:
ありがとうございます! ふう、よかったぁ。
高麗野 あうん:
やりましたね!
私、さっそく二人を下ろしてきます!
料理長:
なあ、あんた。よければこの料理、
作り方を教えてくれねえか?
庭渡 久侘歌:
構いませんよ。
そんな難しいことはしていないので。
料理長:
なるほど、そうするのか……。あんた、やるなぁ。
ところで、あんたらは、なんの用で来たんだ?
庭渡 久侘歌:
幻想郷中で暴れまわった鬼……。
あの天邪鬼を浄化しに来たんです。
料理長:
本気かぁ? あんま強そうには見えねえが……。
でも、本気なら正邪様の部屋を教えてやるよ。
庭渡 久侘歌:
よろしいのですか? そんなことをすれば、
怒られるだけでは済まなそうですが……。
料理長:
いいんだ。力をもらっても、結局こき使われて、
弱っちい頃の俺と、なにも変わんねえ。
料理長:
そんなら、悪いことに手を貸すより、
なんかいいことした方が、マシだと思うんだ。
庭渡 久侘歌:
そうでしたか……。
でしたら、道案内をお願いします。
庭渡 久侘歌:
いよいよ、鬼退治のときですね……!