-------------- 鬼ヶ島・玉座 -------------- 庭渡 久侘歌: たくさんの物が積まれていますね……。もしや、 これはすべて、天邪鬼が集めた宝物でしょうか。 少名 針妙丸: やい! いるんでしょ、正邪! 桃太郎一行が、ここまで来たぞ! 鬼人 正邪: 来たな、桃太郎……。 少名 針妙丸: まさかあんたが、鬼ヶ島の鬼になるなんてね。 強者になるなんて、らしくないんじゃない? 鬼人 正邪: いいや、鬼は弱者さ。あらゆる物語でやられ役、 常に財宝を奪われてきた、持たざる者だ。 鬼人 正邪: だから私たちは、多くを持つ者どもから 何もかもを奪う権利があるよなぁ!? 庭渡 久侘歌: そんな権利、誰にもありません! これ以上、被害を広げさせはしませんよ! 高麗野 あうん: 私の……、みんなの大事な宝物を 返してもらいます! 森近 霖之助: がんばってくれ、みんな! せめて足手まといにはならないよう努力する! 少名 針妙丸: お供がそろった今なら、負けないよ! 桃太郎として、あんたを討つ! 鬼人 正邪: ふん。強者が勝つ結末なんか、 ひっくり返してやる! かかってこい、桃太郎! 少名 針妙丸: ぐぎぎ……! でも、今回は耐えられる気がする! 庭渡 久侘歌: そう何回も、吹き飛ばされるつもりはありません! こちらも風で押し返してやります! 鬼人 正邪: うおっと!? 押し返されただと!? 庭渡 久侘歌: 対抗できてるわ! やはり、鬼を倒すのに 必要な役者がそろったからですね! 高麗野 あうん: これなら、きっといけますよ! こっちから反撃です! やああっ! 鬼人 正邪: ぐっ……! なるほど、 さすがにお供をそろえただけはある! 少名 針妙丸: いける! ここが攻め時だ! このまま押し切るよ! みんな、かかれー! 鬼人 正邪: しかし、そんな都合よく勝てると思うなよ! こっちにも、秘密兵器があるんだからな! 森近 霖之助: あれは、もしかして打ち出の小槌か? だとしたら、相当まずいぞ!? 少名 針妙丸: あいつが持ってるのは、そのレプリカだよ。 願いを叶える力はない! 鬼人 正邪: 甘いな! その発想をひっくり返してやる! 小槌よ! 私を大きくしろ! 少名 針妙丸: うそ!? なんで!? まさか、これもユメミタマの力だって言うの!? 鬼人 正邪: はっはっは! これが鬼の力、鬼の財宝! お前らみんな、ぺしゃんこにしてやる! 庭渡 久侘歌: き、来ますよ!? とにかく逃げないと! 鬼人 正邪: ほらほら! さっきの威勢はどうした!? 逃げるばっかりじゃ、面白くないだろ!? 森近 霖之助: このままだと、全員つぶされる……。 なにか、できることは……!? 少名 針妙丸: くそー! 偽物の小槌にまで力を与えるなんて! どこまで鬼を再現するのさ、あのユメミタマ!? 森近 霖之助: ……はっ! そうか、正確に鬼を再現しているなら 弱点だって再現されているはず……! 森近 霖之助: みんな! 試したいことがある! 少し時間を稼いでいてくれ! 庭渡 久侘歌: なにをするんですか!? 森近 霖之助: 鬼の弱点を用意してくる! だから、それまで耐えてくれ! 鬼人 正邪: なにをするつもりか知らないが、 万に一つの可能性もつぶしてやる! 高麗野 あうん: ああっ、入口が崩れて……!? これじゃあ、店主さんが戻ってこられませんよ! 鬼人 正邪: ついでに、お前らの退路もなくなったようだな! さあ、これでおしまいだ! 庭渡 久侘歌: いいえ! 必ず彼は戻ってきます! 少名 針妙丸: 桃太郎たる者、お供が戻ってくるまで、 どっしり構えてるもんさ! 鬼人 正邪: 面白い! だったら耐えてみせな! その願いも希望も、根こそぎ奪ってやる!