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幻想昇竜戦 四回戦
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犬走 椛:
対局が始まってから、そろそろ五十手目……。
でも、まだ何かを仕掛けてくる様子はないわね。
犬走 椛:
あんなに自信満々に言ってたのに、
指し方も普通っぽいし。警戒しすぎたかな……。
チルノ:
うぐっ、こっからどうしよう……。
と、とりあえず攻めないと! 香車をここに……。
犬走 椛:
ふむ、ずいぶん遠い場所を攻めるね。
それならこちらは、と金で銀をいただきましょう。
チルノ:
あっ、しまった! ずるい!
犬走 椛:
ずるくない。さて、守りは全て、はがし終わった。
後は、ゆっくりと包囲を狭めて追い込むだけね。
チルノ:
ぐぬぬぬ……。あ、あたいは最強なの!
絶対に負けないんだから!
チルノ:
くらえーい!
これがあたいの必勝の一手、猛吹雪だー!
犬走 椛:
うえええっ!? さ、さむ! 寒すぎる!
まずい、このままじゃ凍えて、意識が……!
犬走 椛:
う、運営さーん! 火鉢持ってきてぇー!
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数分後
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犬走 椛:
うぅ~、まだ寒い……。
犬走 椛:
でも、持ってきてもらった火鉢のおかげで
なんとか試合は続けられるわね。あったか~い。
犬走 椛:
とりあえず、手番だから龍を寄せて……。
あ、あれ? 動かない?
犬走 椛:
う、うそでしょ。駒が……凍りついてる!?
チルノ:
ふっふーん。すごいでしょ?
これが、あたいの必勝策だ!
犬走 椛:
む、むちゃくちゃだー! 運営さーん!
もっと火鉢を増やしてくださーい!
犬走 椛:
……でも、本当にまずいな。将棋盤が
どんどん凍って、動かせる駒が減ってきてる。
犬走 椛:
火鉢が増えても、溶け切るまで待っていたら
時間切れで、こちらの負けだ。どうする……!
犬走 椛:
……とりあえず、
今は、動かせる駒で手を進めるしかない!
チルノ:
へえ~、まだあきらめないの?
悪あがきだねえ! ムダムダ!
チルノ:
さあ、あたいの番だ!
勝利は見えてる。これで、とどめだー!
犬走 椛:
……は?
チルノ:
ふふーん! どうやら完璧に追いつめられて、
声も出せないようね!
犬走 椛:
いや、これは……。
し、審判! 確認を!
運営の河童:
はい? ……あー、はい。これはダメですね。
四回戦は、犬走選手の勝利となります。
チルノ:
えええっ!? な、なんでよー!?
ちゃんと見てよ、王手でしょ!?
犬走 椛:
7筋に、歩が二枚。
残念だけど、これは二歩という反則なのよ。
チルノ:
反則ぅ!?
そ、そんな……。そんなの……!
チルノ:
認めない! あたいが負けたなんて、
絶対に認めないんだからー!
犬走 椛:
ま、また吹雪!? 前が見えない!
……うわっ! つららが飛んできた!
チルノ:
こうなったら、あんたを倒して
不戦勝ってことにして勝ち抜けてやる!
犬走 椛:
負けは負けとして、ちゃんと認めなさい!
それが、将棋を指すうえで、最低限の礼儀よ!
犬走 椛:
礼儀知らずなその態度、頭に来たわ。
お仕置きだ! この火鉢を食らえーっ!
チルノ:
ぎゃあー! 熱い熱い!
灰がかかった所から溶けちゃうよー!
犬走 椛:
勝てないからって、
こんな盤外戦術を持ち出すなんて、言語道断。
犬走 椛:
しかも、対局後の挨拶もないし。
まったく……。
犬走 椛:
さてと。対戦表によると、
私の次の相手は……。
犬走 椛:
えっ、古明地さとり!?
犬走 椛:
こ、心を読む相手だなんて……。
すぐに対策を練らなければ!