物部 布都:
ううむ、人形遣い殿を見失ってしまった。
いったいどこへ行ったのやら。
物部 布都:
ん? 今の音はいったい……?
とりあえず、行ってみるか。
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玄武の沢
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物部 布都:
たしか、このあたりから聴こえたが……。
???:
あぶなーい!!
物部 布都:
え? わ、わああああああ!!
物部 布都:
な、なんだ?
巨大な木の人形が倒れてくるなんて……。
河城 にとり:
いや~、ごめんごめん。生きてる?
物部 布都:
おぬしか! こんなものを作ったのは!
危うく大ケガするところだったぞ!
河城 にとり:
だから危ないって言っただろ。
下敷きにならなかったんだし、よかったじゃん。
物部 布都:
よくないわ! だいたい、これはなんだ?
奇妙なものを作りおって。
河城 にとり:
あんたのとこでやる、お祭りの準備さ。
今年の火祭りは、神霊廟で派手にやるんだろ?
物部 布都:
あ、ああ。そうだが……。
河城 にとり:
そのお祭りの盛り上げに、協力しようと思ってね。
色々作ってるわけよ。
河城 にとり:
たとえば、さっきの木の人形。外の世界では、
こいつを燃やして、豊作を祈願するみたいでさ。
物部 布都:
ほーん。外の世界の風習ということか。
ずいぶんと大きなものを燃やすのだな……。
河城 にとり:
それから、一番の目玉はこっちね。
度肝抜かすなよ~。じゃーん!
物部 布都:
な、なんだ! この大きな河童の像は!
河城 にとり:
ねぶただよ。和紙で作った大きな灯籠さ。
火祭りにぴったりだろ? 厄災を祓う意味もあるし。
物部 布都:
ほ~、立派なものだなぁ。
これならたしかに、客も喜ぶに違いないぞ。
河城 にとり:
そうだろ? 祭りでは、こいつらを展示して、
見物料で一儲けさせてもらうよ。
物部 布都:
結局、そういう魂胆か……。
河城 にとり:
そんなわけで、このねぶたをもう少し調整したくてさ。
向こうの作業場まで、運ぶの手伝ってくれよ。
物部 布都:
な、なぜ我が手伝わねばならんのだ!
河城 にとり:
いいじゃないか。これも何かの縁だし。
火祭りを盛り上げるためだと思ってさ。
物部 布都:
そ、そう言われると……。
仕方ない、手伝ってやるか。
物部 布都:
おおっ……。
想像はしてたが、なかなかの重さじゃな。
物部 布都:
そういえば、さっきここらで
大きな音が聴こえたのだが、何か知らぬか?
河城 にとり:
大きな音? それなら装置が暴発した音かもな。
さっき、人形を燃やすための発火テストをしてさ。
河城 にとり:
そこで、なぜか火が異常に燃え上がっちゃって。
ねぶたを運ぶ装置に飛び火して、暴発したんだよ。
物部 布都:
火が異常に燃え上がる?
もしかして、その火は……。
物部 布都:
ん? 今、何か足元で……、ボタン?
河城 にとり:
あーっ!? あんた、そのボタンを踏んだか?
踏んだよな! ヤバいぞ、ということは……。
物部 布都:
な、なんだなんだ!?
急に、ねぶたが燃え始めたぞ!?
河城 にとり:
さっきのボタンは、ねぶた内部のろうそくに、
一斉着火するためのボタンなんだ!
河城 にとり:
でも、ろうそくの配置がまだ不完全だったから、
和紙に火が燃え移ったんだよ!
物部 布都:
ど、どうしてそんなボタンが、足元に……。
河城 にとり:
ねぶたに取り付けてたのが落ちたんだろ。
もー! なんで踏んじゃうんだよー!
物部 布都:
な、なんで我が怒られねばならんのだ!
そもそも、おぬしが手伝えと言ったのだぞ!
河城 にとり:
でも、燃やしてくれとは頼んでない!
ほら、消火の邪魔だよ! どっか行って!
物部 布都:
手伝えと言ったり、どこか行けと言ったり……。
もう知らん! 我は行くからな!
河城 にとり:
くそー、あとで絶対弁償させてやる……。
おーい、みんなー! さっさと消火するぞー!
河城 にとり:
ふー。なんとか収まってきたね。
あとは、この燃え残りを片付けて、っと……。
河城 にとり:
ひゅい!? な、なんでまた火が燃え上がった!?
しかも、炎が黒く……! う、うわぁああ!