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守矢神社
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東風谷 早苗:
はー。幻想郷の秋は、本当に綺麗ねー。
こんな見事な紅葉、外じゃなかなか見れないわ。
東風谷 早苗:
景色目当てでやってくる『ついで参拝者』も
増えるし、まさに実りの秋って感じだわー。
博麗 霊夢:
……うそ。ここにもないっていうの?
博麗 霊夢:
わざわざ山まで登ってきたのに、
それじゃ、私はどうしたらいいのよ……っ!
東風谷 早苗:
あのー、霊夢さん?
そんな深刻な顔して、何かあったのですか?
博麗 霊夢:
あんた、気づいてないの?
秋も終わりが近いのに、アレがどこにもないのよ。
博麗 霊夢:
この、芋を焼くための、落ち葉がね……!
東風谷 早苗:
落ち葉? ここは山のど真ん中ですよ。
それこそ掃いて燃やすほど……って、あら?
東風谷 早苗:
葉っぱ、全然落ちてないですね。そういえば、
今年は、まだ落ち葉の掃除をしてないような。
博麗 霊夢:
そうなのよ! せっかく良い芋をもらったから、
これは絶対焼き芋だわって箒を握ったのに……。
博麗 霊夢:
神社にも、山にも、落ち葉が一枚もないのよ?
もー、許せないわ、あの野良神様!
東風谷 早苗:
秋静葉さんのことですか?
たしかに、紅葉と落葉は、彼女の御神徳ですが。
博麗 霊夢:
あそこの姉妹は、秋が大好きでしょ。おおかた
冬が来るのが嫌で、落葉を遅らせたんじゃないの?
東風谷 早苗:
ええ? でも、かなり真面目な神様ですよね?
年に一度の大仕事を、そんな理由でサボるかしら。
???:
うわあぁ~っ!! 巫女様、巫女様ぁ~っ!
どうか、我々をお助けください~っ!!
東風谷 早苗:
ひえっ!? い、いきなり何事です!?
???:
ああ、どうか聞いてください。
私たちの神様が……、穣子様と静葉様が……!
???:
蔵に閉じこもって、出てきてくれないのです!
東風谷 早苗:
……へっ?
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人間の里
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穣子の信者A:
ささっ! 巫女様、どうぞこちらに……。
あれが、例の蔵にございます。
博麗 霊夢:
静葉がいるって言うから来たけど、
いたって普通の蔵ね。本当にこの中にいるの?
東風谷 早苗:
妹の穣子さんも、一緒とのことですが……。
あの、詳しい経緯をお聞きしても?
穣子の信者A:
はい。私どもは、秋に実入りの多い農家で、
昔から、豊穣の神、穣子様を信仰しています。
穣子の信者A:
私たちの関係は、これまでずっと良好でしたが、
今から七日前のこと……。
穣子の信者A:
穣子様は、突然現れたかと思うと、収穫物を
しまったこの蔵に閉じこもられてしまった!
穣子の信者B:
そして、説得に来てくださった姉の静葉様をも
引きずり込み、後はもう、うんともすんとも……!
博麗 霊夢:
七日前……。いつもなら紅葉が散り始める頃ね。
落ち葉がなかったのは、つまりこのせいか。
穣子の信者B:
俺たちも、いろいろやってはみたんです。
昼夜声をかけ、お籠りになった理由を訊ね……
穣子の信者B:
けど、穣子様は何も答えてくれません。
このままじゃ、俺たちはおしまいです!
東風谷 早苗:
おしまい、ですか?
それは少し、おおげさなような。
穣子の信者A:
いえ、事実ですとも。
なぜなら明日は、年に一度の収穫祭の日。
穣子の信者A:
これは、お招きした穣子様に一年の感謝を捧げ、
次の年の豊作をお願いする、大事なお祭りです。
穣子の信者A:
そこに神様がいらっしゃらず、豊作祈願も
できないとなれば、我らの農家生命は……死!
穣子の信者B:
うぅ。俺たち、穣子様に見捨てられたのか?
いやだぁ、畑以外で働きたくねえよぉ……。
博麗 霊夢:
はー。幻想郷にこんな熱心な信仰が
あったとはね。うらやましいことだわ。
東風谷 早苗:
それで、どうして私たちを? 聞いた限り、
割と身内の問題という気がするのですが……。
穣子の信者A:
だって、あなた方、巫女でございましょう?
穣子の信者A:
神様とのあれこれを解決するのは、巫女様の
得意分野、お仕事、永遠の使命……! ということで。
穣子の信者B:
お願いします! 巫女様のお力で、
俺たちの収穫祭を成功させてくださいっ!!
博麗 霊夢:
げっ。
東風谷 早苗:
ええ~!? でも、私たちは、
それぞれ別の神様をお祀りする身ですし、その。
穣子の信者A:
そこをなんとか!
穣子の信者B:
このとおり~!
東風谷 早苗:
うっ。押しが強い……!
博麗 霊夢:
ちょっと、何モタついてるの?
わかってるでしょうけど、私は絶対や……
東風谷 早苗:
……やりましょうっ!!
その依頼、私たち二人が引き受けました!
博麗 霊夢:
はあ!? ちょ、あんた何をっ……。
東風谷 早苗:
みなさんの秋の収穫祭は、私たちが絶対に
成功させてみせます! お、お任せくださーい!