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妖怪の山
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東風谷 早苗:
か、輝夜さん?
今のは、どういうことですか?
蓬莱山 輝夜:
言った通りよ。貴方たちは今日、
この山から食べ物を持って出ることはできない。
蓬莱山 輝夜:
なぜって、この山の食材は全部、
これから白玉楼で行う宴会の料理になるの。
蓬莱山 輝夜:
ほら。幽々子って、美食家でよく食べるから、
質も量も必要なのよ。だから、ね?
博麗 霊夢:
ね?って……、横暴な奴ねぇ。そんな理由で、
山一つ分独り占めしようって言うの?
東風谷 早苗:
行きましょう、霊夢さんっ。
なんだかんだ言っても、収穫は早い者勝ち。
東風谷 早苗:
私たちが先に食材を手に入れてしまえば、
輝夜さんもちょっかい出せないんですから!
蓬莱山 輝夜:
……早い者勝ち、ねぇ。
その理屈を口にしたこと、後悔しないといいけど。
東風谷 早苗:
では、気を取り直して、捜索開始です!
協力して、最高の松茸を見つけましょうね!
博麗 霊夢:
そうと決まれば、まずは役割分担ね。
私は指示を出す係。で、あんたは地面を探す係。
東風谷 早苗:
も~。そんなものぐさな態度じゃ、
穣子さんの蔵の扉は、永遠に閉じたま……あら?
東風谷 早苗:
霊夢さん、その足元にチラっと見えてるの……、
ま、松茸じゃないですか!?
博麗 霊夢:
えっ!? ……ほんとだー!
うわっ、しかも大きい!?
東風谷 早苗:
すごいすごい、大物ですよ!
は、早く採ってください! そーっとですよ!?
博麗 霊夢:
わ、わかってるわよ。
キズがつかないように、慎重に……っ。
博麗 霊夢:
わっ!? いま何か通っ……ああっ!?
ま、松茸がなくなってるー!?
東風谷 早苗:
えっ!? 今の一瞬で、いったい何が!?
蓬莱山 輝夜:
だから言ったでしょう?
貴方たちは、何一つ手に入れることはできないって。
蓬莱山 輝夜:
ふふ、意外と早い再会だったわね。
どう? いい食材は見つかったかしら?
東風谷 早苗:
輝夜さん! と……、椛さん?
白狼天狗の貴方が、なぜ輝夜さんと?
犬走 椛:
私にも、付き合いというものはありますので。
さ、輝夜さん。この松茸をどうぞ。
博麗 霊夢:
そ、それ、私が見つけたやつじゃない!
あんた、横からかっさらったわね!?
蓬莱山 輝夜:
あら。収穫は早い者勝ち、でしょ?
さっき、早苗だってそう言ってたものね?
東風谷 早苗:
こ、こんな強力な味方がいたとは……。
でも、負けません!
東風谷 早苗:
霊夢さん、行きましょう! そして、
椛さんより早く、良い食材を収穫するんです!
東風谷 早苗:
私たちの帰りを待つ、
穣子さんの信者のためにも……おーっ!
博麗 霊夢:
こ、この天狗、速いっ! 松茸どころか、
キノコというキノコが狩り尽くされていく!
東風谷 早苗:
そんなっ! 妥協して狙った栗……葡萄まで!?
こうなったら、あとはもうドングリしか……!
東風谷 早苗:
あー! ドングリまでー!!
月の姫には、情け心がないのですかーっ!?
東風谷 早苗:
うぅ、負けた……。本当に全部獲られた~。
博麗 霊夢:
白狼天狗の身体能力に、千里先まで見通す眼……。
この状況で、これほど手強い相手はないわね。
蓬莱山 輝夜:
うふふ。助っ人を頼んでよかったわー。
あ、それで椛、お礼の話だけど……。
犬走 椛:
はい。近々永遠亭に伺うので、そのときにでも。
貴方との対局、楽しみにしていますね。
博麗 霊夢:
……対局? それが、椛への報酬?
蓬莱山 輝夜:
ええ。この前、永琳がナントカ戦とやらで
椛と対局したらしいんだけど……。
蓬莱山 輝夜:
その後、『主である私はもっと棋力が高い』とか
言ってたら、あの子、真に受けちゃって……。
博麗 霊夢:
それで、手伝いの交換条件に?
あんた、実際将棋強いの?
蓬莱山 輝夜:
…………今からえーりんに教えてもらうわ。
博麗 霊夢:
こ、こいつ……。
こういうとこがタチ悪いのよね、ほんとに。
東風谷 早苗:
あ、あの、輝夜さんっ。
東風谷 早苗:
今回は、私たちの完敗です。ですが、
私たちには、どうしても収穫物が必要で……。
東風谷 早苗:
お礼は必ずしますので、どうか、
少し食材を譲ってもらえないでしょうか……!?
蓬莱山 輝夜:
ふーん。貴方たち、なんだかワケありなのねぇ。
蓬莱山 輝夜:
でも、あーげないっ。
そんなに欲しいなら、白玉楼まで奪いに来たら?
博麗 霊夢:
完っ全に遊ばれてるわね。
どうする? 帰って信者たちに謝る?
東風谷 早苗:
ふっ……。まさかですよ、霊夢さん。
東風谷 早苗:
行きましょう、白玉楼。そして、松茸より
もーっといい物をいただこうじゃありませんか!