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白玉楼
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東風谷 早苗:
たのもー!!
魂魄 妖夢:
うるさいな。道場破りじゃあるまいし、
そんな大声出さなくても。
魂魄 妖夢:
あなたたちの事情は、幽々子さまたちから
聞いています。さ、こちらへどうぞ。
博麗 霊夢:
何よ、ずいぶんあっさりね。
収穫物、簡単にもらえそうじゃない。
東風谷 早苗:
さすがの幽々子さんも、山一つ分の食材は
いらなかったんですかね? ついていきましょう!
魂魄 妖夢:
着きましたよ。道具は用意しておいたので、
さっそく始めてください。
東風谷 早苗:
え? ここって……、庭ですよね?
始めるって、何をですか?
魂魄 妖夢:
ん? あなたたち、収穫物と引き換えに、
ここで働きにきたんじゃないの?
魂魄 妖夢:
幽々子さまの巨大家庭菜園……
その名も白玉村をつくる最初の労働力として。
博麗 霊夢:
は、はくぎょくむら? 労働力?
じゃあ、そこに鍬が見えるのって……。
魂魄 妖夢:
もちろん、土を耕すためよ。
ほら、わかったら、さっさと働く働く!
博麗 霊夢:
面倒なことになったわね。
早苗、どうするつもり?
東風谷 早苗:
どうするって……、やるしかないですよ!
東風谷 早苗:
これも収穫祭成功のため。
私は、白玉村の最初の村人になります! おーーっ!
魂魄 妖夢:
───しかし、気合いで畑ができるほど、農作業は
甘くない。二人は、早くも過酷な洗礼を受ける……。
東風谷 早苗:
ぐぐ……。鍬が、重い……っ!!
博麗 霊夢:
も、もう肩が上がらないぃ……っ。
土を耕すのって、こんなに大変なの……!?
魂魄 妖夢:
全身を酷使する、果てなき重労働……。
博麗 霊夢:
や、やっと畑ができてきた。
とりあえず、大根の種でもまいておきましょうか。
東風谷 早苗:
わわっ!? まいた種が、宙を舞ってる……!?
幽霊のイタズラですね! やめなさーい!
魂魄 妖夢:
幾度となく襲いくる、
害獣ならぬ害霊の妨害……。
博麗 霊夢:
も、もうダメ。
早苗、あとは頼んだ……わ……。
東風谷 早苗:
れ、霊夢さん……!?
さっきもそうやってサボッてませんでしたか!?
魂魄 妖夢:
共に手を取りあうはずの、仲間の裏切り……。
魂魄 妖夢:
それは、白玉楼の熟練庭師、魂魄妖夢の
目から見ても、凄惨極まる現場であった……。
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8時間後
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博麗 霊夢:
いやー……。人間、やればできるものね。
こんなに広大な畑を、二人で作れちゃうなんて。
東風谷 早苗:
れ、霊夢さんは早々に脱落したじゃないですか!
おかげで、私は、もう……
東風谷 早苗:
うぅ。全身がボロボロで、動けません……。
作物を育てるって、ものすごいことなんですね。
西行寺 幽々子:
あら! 本当に畑ができてるー。
西行寺 幽々子:
妖夢に進捗は聞いていたけど、期待以上だわ。
白玉村の村長として、お礼を言わないとね。
蓬莱山 輝夜:
ずっと働き通しで、お腹が空いたでしょう?
はい、これ。幽々子からよ。
東風谷 早苗:
わっ! すごい量のおにぎり……!
幽々子さん、いただいていいんですか?
西行寺 幽々子:
ええ、頑張ってくれたお礼だもの。
ほら。旬の食材を、今年の新米と合わせたのよ。
博麗 霊夢:
へえ。あんたにしちゃ、気が利くじゃない。
それじゃ、遠慮なくいただきまーす。
東風谷 早苗:
は~、ごちそうさまでした!
いやー、食べましたね~!
博麗 霊夢:
ほんと。まさかあの量を二人で食べきるなんてね。
それで、幽々子? 報酬の収穫物の件だけど……
西行寺 幽々子:
ん? もう、あげたでしょ?
蓬莱山 輝夜:
そうよ。今、二人で食べてたじゃない。
新米と旬の食材、今年の収穫物のおにぎり。
東風谷 早苗:
…………へっ?