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収穫祭当日 人間の里
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東風谷 早苗:
いや~っ。気持ちいい秋晴れ! うなる食欲!
収穫祭日和ですねえ、霊夢さん!
博麗 霊夢:
そうねえ。昨日のこの時間は、
どうなることかと思ってたけど……。
博麗 霊夢:
信者たちは、昨日のお礼~とか言って、
お酒もごちそうもくれるし、今日はいい日ね。
東風谷 早苗:
あ。霊夢さんが考えてること、
当ててあげましょうか?
東風谷 早苗:
こんなに頑張った甲斐があるなら、たまには
よその神様に尽くすのも悪くないかも~でしょ!
博麗 霊夢:
誰がそんなこと。私はただ、出張巫女って
儲かるかしらって考えてただけで……、ん?
穣子の信者A:
いやいや! こちらにおられましたか、巫女様!
穣子の信者A:
昨日は、本当にありがとうございました!
おかげで、穣子様と和解することができました!
穣子の信者B:
それで、俺たちなりのお礼なんですが、
本日これより始まる、お祭りの目玉の催し事……
穣子の信者B:
その主役を、お二人に
務めてはいただけないでしょうか?
東風谷 早苗:
えっ、主役? 私たちが?
穣子の信者A:
例年は穣子様がお務めになるのですが、
今年は、その穣子様が、ぜひお二人にと!
博麗 霊夢:
えー。私は、そういうのは……
穣子の信者B:
いやいや、そう言わずに! やりましょうっ!
さあ、こちらです! さあさあ!
博麗 霊夢:
だっ! お、押しが強いのよ、ここの信者は!
わかったわかった! 行けばいいんでしょ~!?
穣子の信者A:
さあ、お集まりの皆さん!
我らが秋の収穫祭の、目玉行事の時間ですよ!
穣子の信者B:
今年の主役は、ご存知この方!
東風谷早苗様と、博麗霊夢様でーす!
東風谷 早苗:
えへへ、手振っちゃお。
博麗 霊夢:
まさか、舞台に上げられるとはね。
いったい何をするのかしら?
穣子の信者A:
例年にない事件が起きた本年ではありましたが、
お祭りを開催できたのは、このお二人のおかげ。
穣子の信者A:
その感謝を、どうぞギュッと込めてください!
それでは始めましょう、───芋投げの儀!!
東風谷 早苗:
え。
博麗 霊夢:
イモ?
東風谷 早苗:
いたっ!?
え? サツマイモが飛んできた……なに?
博麗 霊夢:
う、うわーっ!? 穣子の信者が、
笑顔で芋を投げつけてくる……なんなの!?
穣子の信者B:
これは、収穫物の中でも特にお芋を愛する神様、
穣子様のご要望から生まれた伝統的な行事!
穣子の信者B:
ちなみに、ぶつけているのは今年採れた芋。
ぶつけた位置や本数で、来年のツキが占えます!
東風谷 早苗:
な、なんて過激な!
博麗 霊夢:
というか野蛮よ!
こんなのが伝統って、穣子の信者って何?
穣子の信者A:
さらに今年は、ちびっ子も参加できるようにと、
香霖堂さんから特別な道具を購入しました。
穣子の信者B:
えーと。名前は、手動ぴっちんぐましん……?
丸い芋を遠くに飛ばせる便利道具だそうでーす!
東風谷 早苗:
ピッ……? いやいや!
それ、人に向けちゃダメなやつでは?
博麗 霊夢:
うぅ、芋の雨が降る~。
いいことしたのに、なんでこうなるのよー!
西行寺 幽々子:
まあ、芋が飛び交ってる。
まるで弾幕みたいねぇ。
蓬莱山 輝夜:
ほんと。昨日といい、今日の神楽といい、
今年の秋は、面白いものがたくさん見れたわね。
蓬莱山 輝夜:
霊夢たちには、ちょっと意地悪しちゃったけど、
おかげで退屈しないで済んだわ。
西行寺 幽々子:
ふふ、たまにはいいでしょう。私たちは、
不動と不変の世界……冥界と月から来た者。
西行寺 幽々子:
この身が、時に置き去りにされて久しいけれど、
だからこそ、生者の豊かな移り変わりは愛おしいわ。
蓬莱山 輝夜:
幽々子……。
蓬莱山 輝夜:
やだぁ。今の言い方、なんだか神様みたいよ?
西行寺 幽々子:
えぇ~? そうかしらぁ? じゃあ、
それっぽく、人々にお恵みでもあげちゃう?
蓬莱山 輝夜:
いいわね~。山の実りを分けるついでに、
宴会に交ざっちゃいましょう!
東風谷 早苗:
───こうして、私と霊夢さんによる、
収穫祭大成功作戦は、無事終了しました。
東風谷 早苗:
霊夢さんは、割を食ったってボヤいてましたが、
私は、やっぱり、やってよかったと思います。
東風谷 早苗:
だって、あの神楽のあと、
私たちの所に人が来て……
東風谷 早苗:
私たちの神社に、ぜひとも
参拝をしたいと言いにきてくれたんですよ?
東風谷 早苗:
情けは人の為ならず。実りや想いは、
巡り巡って、また還ってくるのでしょう。
東風谷 早苗:
願わくは、この幻想郷に、そんな
巡りゆく喜びが、ずっとあり続けますように。
東風谷 早苗:
芋を全身に受けながら、
そんなことを想う、この私なのでした───。