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人間の里
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鬼人 正邪:
そば打ち、おせちに、大掃除。
どこもかしこも、年の瀬の雰囲気だねえ。
鬼人 正邪:
巫女やら天狗やら、強者のやつらまで
なーんか、そわそわ浮かれてやがるみてーだし。
鬼人 正邪:
……そういえば。今日は、紅魔館で
派手な宴会があるらし……、うぶっ!?
鬼人 正邪:
顔になにか……! これ、新聞じゃないか。
『幻想郷、空前のクリスマスブーム到来』……?
鬼人 正邪:
『外の世界の催しだが奇妙な飾りが可愛いと評判。
各地で競うように宴会が開かれ……』ほう。
鬼人 正邪:
なるほど、繋がったぞ。
紅魔館のやつら、これを計画してたんだな?
鬼人 正邪:
いいねえ、感心だねえ、その余裕。
私が手伝って、面白くしてやろうじゃないか!
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紅魔館
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十六夜 咲夜:
そっちは飾りつけ、こっちはプレゼントの用意。
夜まで時間がないんだから、急いで!
十六夜 咲夜:
ふう、クリスマスパーティの準備は大変ね。
お嬢様ったら急に言い出すんですから……。
妖精メイド:
でも、みんなでプレゼントを持ち寄って
交換しあうの、ちょっと楽しそうですよね!
十六夜 咲夜:
そうね。そのために、お客様も大勢呼んだから。
どんなプレゼントが当たるか、楽しみだわ。
十六夜 咲夜:
じゃあ、私は買い出しに行くから、
こっちの準備は任せるわね。
鬼人 正邪:
ずいぶん大掛かりな準備をしているようだな。
だが……。
鬼人 正邪:
ちょっとばかり、刺激が足りないんじゃないか?
仕方ない。正邪様が、いっちょ手伝ってやるか!
チルノ:
よーし! 雪だるまのかき氷完成!
これは、ピースのプレゼントにしよう!
チルノ:
でも、あんまり地獄っぽくないな……。
ちょっと派手な木の実を拾ってこよーっと!
鬼人 正邪:
おいおい、この真冬にかき氷を贈るのか。
その真逆っぷりは認めるが……さて、味はどうかね。
チルノ:
あーっ!? お前、なに勝手に食べてんだ!
それは、ピースに渡すプレゼントだぞ! 返せ!
鬼人 正邪:
言われなくても返してやるよ、
こんな味のしない、かき氷! おらっ!
チルノ:
ああっ!? かき氷が地面に……!
な、なんてことするんだよ!
鬼人 正邪:
へっ、今度は味付きで作り直すんだな!
チルノ:
どうしよう、せっかく頑張って作ったのに。
今から作り直すんじゃ、もう間に合わないよ……。
十六夜 咲夜:
ローズマリー、セージ、それと鳥を丸ごと1羽。
これで必要なものは、そろったわね。
十六夜 咲夜:
あとはケーキだけど、お嬢様に合わせるなら、
やっぱり赤色よね。なにで色味を……、あら?
十六夜 咲夜:
そこに置いていたはずの買い物かごがない……!?
まさか、泥棒!? この忙しい時に!
鬼人 正邪:
はっはっは、油断したな!
この食材は、私がいただいていくぜ!
鬼人 正邪:
あーあ、大変だ。
今日は、ご馳走になっちまったなあ!
十六夜 咲夜:
待ちなさ……! いや、もう買い直した方が
早いわね。ああ、余計な手間と出費が……。
レミリア・スカーレット:
あとは星を乗せるだけね。
そーっと、慎重に……よし、できた!
レミリア・スカーレット:
う~ん。我ながら完璧なクリスマスツリーだわ。
誰が見ても、感動間違いなしね!
鬼人 正邪:
まったくだな。出来が悪くて泣けてくる!
特に星の部分がな!
鬼人 正邪:
きらきらピカピカ、趣味が悪いねえ。
しょうがない、親切な私が片付けておいてやるよ!
レミリア・スカーレット:
え、なに!? 泥棒!?
ちょっと、それ返しなさーい!
鬼人 正邪:
いやあ、今日は充実した一日だったな。
あんなに誰かを困らせたのは久々だ!
鬼人 正邪:
こんなにうまくいくなら、幻想郷ごと
ひっくり返るような計画を立ててもよかったか?
???:
あらあら、まだそんなことを言っているのね。
ヘカーティア・ラピスラズリ:
んもう、やっと見つかったわ。あなた、
今日は一日中、イタズラ三昧だったようね?
鬼人 正邪:
あ? 誰だ、お前は……。
ヘカーティア・ラピスラズリ:
そんなあなたに、大事な話があるの。
よーく聞いてちょうだいね?
ヘカーティア・ラピスラズリ:
……あなた、このままだと罰が下るわ。
恐ろしい地獄の底に落とされて、ね。
鬼人 正邪:
地獄……? はっ、ばかばかしい!
そんなのが怖くて、反逆なんかできるかよ!
鬼人 正邪:
だいたい、なんでお前がそんなことを知ってる?
地獄の閻魔様とでも言うつもりかよ?
ヘカーティア・ラピスラズリ:
惜しい。閻魔様じゃなくて、地獄の女神様よ。
だからこそ、誰が地獄に落ちるのかもわかる。
ヘカーティア・ラピスラズリ:
でも、私はとーっても慈悲深いので、
あなたにチャンスをあげることにしました。
ヘカーティア・ラピスラズリ:
これから、ある有名なクリスマスの物語のように
あなたに過去、現在、未来の様子を見せるわ。
ヘカーティア・ラピスラズリ:
最後まで見て反省すれば、
罰を受けなくて済む……かも、しれないわね?
鬼人 正邪:
へっ、誰が反省なんかするかよ。
そもそも、お前に付き合う理由もない。
ヘカーティア・ラピスラズリ:
残念でした。嫌だと言っても連れてくわよん。
さあ、楽しいクリスマスのはじまりよ!
鬼人 正邪:
な、なんだ!? 光で、視界が……!
うわあああああ!?