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後戸の国
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摩多羅 隠岐奈:
舞に里乃よ。よく聞いてくれ。
今日は、二人に大事な任務を頼みたい。
丁礼田 舞:
はい、お師匠様。
大事な任務……ですか?
摩多羅 隠岐奈:
ああ。お前たちは、今が人間にとって
どんな時期か知っているか?
爾子田 里乃:
今は……年の瀬というやつですね。
新年の準備に向け、慌ただしくしているという。
摩多羅 隠岐奈:
その通り。東に行っては料理の買い出し。
西に行っては不用品の処分……などなど。
摩多羅 隠岐奈:
平穏無事に新しい年を迎えられるよう、
誰も彼もが準備に奔走しているんだ。
丁礼田 舞:
はぁ。大変ですねぇ。
摩多羅 隠岐奈:
何を他人事みたいに言っているんだ。
ほら、お前たちにこれをやろう。
爾子田 里乃:
なんですか、これは。大きな箱?
む? よく見ると、数字が書いてあるわ。
丁礼田 舞:
26、27、28……31で終わってる。
あ、もしかして、これって暦?
摩多羅 隠岐奈:
よく気づいたな。そう、
これはアドベントカレンダーと呼ばれる暦だ。
摩多羅 隠岐奈:
外の世界では、異教の主の降誕祭までの期間を
数えるためだけに使われているらしい。
摩多羅 隠岐奈:
ここにあるものは、お前たちの任務のために
大晦日で終わるよう私が自作したものだ。
爾子田 里乃:
それで、いったいどういう任務なのでしょうか?
摩多羅 隠岐奈:
うむ。お前たちには、人間たちが東奔西走する
年越しの準備を手伝ってもらいたい。
摩多羅 隠岐奈:
というのも、博麗神社の新年会に参加したければ
何かしらの働きをしろ、と巫女に言われてね。
爾子田 里乃:
なるほど。そのために私たちが……。
でも、手伝うと言ったって何をすれば?
摩多羅 隠岐奈:
そのために、その暦が必要なんだよ。
ところで、今日は何月の何日だっけ?
丁礼田 舞:
今日は、12月の27日ですが……。
摩多羅 隠岐奈:
よし。ならば、暦の27日の所を見てみろ。
取っ手が付いているだろう?
爾子田 里乃:
本当だ! 引っ張ってみますね。
んん? 何やら扉が開いて、中から紙が……。
摩多羅 隠岐奈:
その紙には、その日の手伝う内容が書いてある。
毎日ひとつ扉を開けて、内容を確認するように。
摩多羅 隠岐奈:
ああ、それと。博麗神社以外にも
幻想郷の各地から手伝いを頼まれているんだよ。
爾子田 里乃:
ということは、新年の宴会に参加するためには、
各地を巡っていかねばならないのですね。
摩多羅 隠岐奈:
そうだ。しかし、お前たちにとっては
人間の文化を学ぶ、いい機会になるだろう。
摩多羅 隠岐奈:
改めて命じよう。新年会に無事参加するため……
大晦日まで、年越しの準備を手伝ってこい!
丁礼田 舞:
わかりました!
お師匠様のためにも、頑張ります!
摩多羅 隠岐奈:
その意気だ。お前たちの活躍に期待しているぞ。
爾子田 里乃:
よーし。それじゃあ、さっそく
今日やることを確認しましょ。
爾子田 里乃:
えーと、「博麗神社の大掃除」と書かれてるわ。
あれ? 下にも何か……。
爾子田 里乃:
「大掃除とは、歳神を迎えるための、
『煤払い』という行事が由来である」……?
丁礼田 舞:
へぇ~、そんな由来があるんだね。
丁礼田 舞:
あっ! お師匠様が、
向こうの扉を開けてくれたみたいだよ。
丁礼田 舞:
よおーし!
じゃあ、博麗神社へ行ってみよう!