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命蓮寺ランド
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聖 白蓮:
さて、それでは何で勝負といきましょうか?
ナズーリン:
丁半でどうです? 二つの賽子の合計が
偶数か奇数かを予想する博打……。
聖 白蓮:
なるほど。大舞台だからこそ、
単純な博打の方がいいかもしれませんね。
ナズーリン:
ところで……、また妙なことを考えたものですね。
賭博で、衆生を救済するだなんて。
聖 白蓮:
……妙なこと? いいえ、まさか。
聖 白蓮:
賭け事の前では、腕力も妖力も無意味。
妖怪も人間も、平等で対等な立場になれます。
聖 白蓮:
種族に何も囚われない。それが賭博。
衆生救済に、これほど相応なものはないのです。
ナズーリン:
……あなたが本気だったってことは、
よくわかりましたよ。
ナズーリン:
……やっぱり負けられないねぇ、この勝負。
ご主人様のためにも、毘沙門天のためにも……。
ナズーリン:
私の、ためにも。
フランドール・スカーレット:
えー、コホン。壺振りは、
このフランドール・スカーレットが務めます。
フランドール・スカーレット:
ご両人。準備の方は、よろしいでしょうか。
聖 白蓮:
ええ。
ナズーリン:
もちろん。
フランドール・スカーレット:
それでは……ハイ、壺被ります!
フランドール・スカーレット:
さて伏せられた壺の中、二つの賽の行く末は。
さあさ、どっちもどっちも! 丁か半か!?
聖 白蓮:
……丁!
ナズーリン:
……半だ。
フランドール・スカーレット:
この壺を上げれば、勝負が決まる。
さあ……、ご覧あれ!
古明地 こいし:
出目は!? 一と……!?
寅丸 星:
二! ……イチニの半だ!
ということは!
ナズーリン:
私の、勝ちだ!
聖 白蓮:
……はあ。どうやら、私の負けみたいね。
聖 白蓮:
運というのは、無常なもの……。
聖 白蓮:
その前では、誰もが平等。だからこそ、
この命蓮寺ランドで、一切衆生救済が叶う……。
寅丸 星:
聖……。それは違います。
貴方は、大切なものを見落としています。
寅丸 星:
私は先ほど、命蓮寺ランドの外で見たのです。
悲しみに暮れる者たちの姿を……。
寅丸 星:
賭博に夢中になるあまり、優しい心を失った者。
金の切れ目が縁の切れ目となり、孤独になった者。
聖 白蓮:
ですが、それは……。
寅丸 星:
本来の貴方であれば、気づかないはずがない。
寅丸 星:
でも、その賽子に憑いたユメミタマのせいで、
貴方は正気を失ってしまった……。
寅丸 星:
もう目を覚ましてください! こんなやり方では、
貴方の願いなんて、永遠に叶わないわ!
聖 白蓮:
け、けれど……、私は。
私は……っ!
村紗 水蜜:
おっと! 油断しましたね!
この賽子は、もらっていきますよ!
聖 白蓮:
……あっ!?
古明地 こいし:
すごーい! びっくり!
ずーっと噴水に隠れてたの?
ナズーリン:
でかした、船長!
さあ、一気に浄化するぞ!
村紗 水蜜:
よかった……。これで浄化できましたね。
ナズーリン:
あのユメミタマ……どうやら、いつまでも友達と
遊んでいたいという想いが込められていたみたい。
ナズーリン:
ずっとずっと、楽しく賽子を振って……。
そんな景色が、ちょっとだけ見えた気がするよ。
寅丸 星:
そうか……。
寅丸 星:
その想いが聖の理想に共鳴して、
命蓮寺ランドを生み出してしまったんですね。
ナズーリン:
……うん。そうかもしれないね。