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迷いの竹林
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因幡 てゐ:
さて、まずは立派なリーダーがどんなものか
見せてあげなくちゃね。兎たち、集合ッ!
橙:
おわ!? 兎が一斉に集まってきて
きれいに整列した!?
因幡 てゐ:
そのまま前進、止まれ! 回れ右して宙返り!
うんうん、今日も素晴らしいわね。よし、解散!
因幡 てゐ:
……どう? これが、
部下から信頼される立派なリーダーの姿よ。
橙:
す、すごい……! どんなエサを使ってるの?
因幡 てゐ:
エサやご褒美で釣ってるわけじゃないわよ。
これはね、私と部下との信頼関係がなせるわざ。
因幡 てゐ:
いいかい、化け猫。リーダーになるなら、
猫たちから信頼を得なければならないのよ。
橙:
し、信頼?
因幡 てゐ:
それには、3つの心得を実践しなければならないわ。
その1、同じ目線で寄り添うこと。
因幡 てゐ:
その2、確かな実力を見せること。
その3、自ら手本を示すこと。って感じね。
橙:
うーん、よくわかんないけど……。でも、
それができれば立派なリーダーになれるのか。
因幡 てゐ:
そういうこと。まあ、私のセミナーを
受けていけば必ず……、ん?
橙:
弱々しい猫の鳴き声が聞こえる……。
もしかしたら、マヨヒガの猫かも!?
橙:
いた! やっぱり、うちにいた子だ!
見つかってよかった~。
マヨヒガの猫:
ふしゃー……!
橙:
あ、あれ? なんか、すごい警戒されてる。
因幡 てゐ:
どうやら、ケガをしているみたいね。
獣に襲われたのかな……。
橙:
じゃ、さっさと手当を……
あ! 近寄ったら逃げられちゃった!
因幡 てゐ:
不用意に近づかないの。こういう相手には、
まず敵じゃないことを理解してもらわなきゃ。
因幡 てゐ:
こう、身体を低くして、目線を合わせて……。
橙:
目線を……? あ、そっか!
さっき言ってた心得ってやつね!
因幡 てゐ:
あん?
橙:
よーし、さっそく……。ほら、こっちにおいでー。
マタタビがあるよー。おもちゃもたくさん……。
マヨヒガの猫:
ふしゃー!
橙:
ダメだー!
同じ目線になってみても、威嚇されるよ!
因幡 てゐ:
そりゃ、高さだけ合わせたってダメだよ。
因幡 てゐ:
同じ目線で寄り添うってことはね、
相手の考えを推し量るって意味なんだ。
因幡 てゐ:
あの猫は今、何を考えているかしら。
獣に追われてケガをした、あの子は……。
橙:
え? えーと、えーと……。
あっ! わかった!
橙:
ねえ、安心して! もう怖いことはないよ。
リーダーである私が、守ってあげるからね!
マヨヒガの猫:
……にゃー。
因幡 てゐ:
よかったわね。猫の方から近寄ってきてくれたじゃない。
橙:
へへ。なんか、リーダーとして
ちょっと認めてもらえた気がする!
因幡 てゐ:
怖い思いをした猫に、安心を保証する……。
なかなかいい着眼点ね。及第点をあげる。
因幡 てゐ:
この調子で私のセミナーを受講すれば、
必ず立派なリーダーになれるわよ!
橙:
うん! 頑張るぞ~!
橙:
うーん……。うちの子たち、なかなか見つからないねー。
因幡 てゐ:
竹林には、もういなかったし、
どこにいるやら……。
少名 針妙丸:
ひいぃぃぃ~っ!! 猫が、猫が~~っ!!
橙:
猫? ……行ってみよう!