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人間の里
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橙:
確かに、いつもより
あちこち猫がうろついているような……。
因幡 てゐ:
う、うわっ。見て、あの家!
猫がたかってる!?
橙:
しかも、あれマヨヒガの猫たちだ!
なんでこんな……。
女の子:
ふええーん! こわいよー!
少名 針妙丸:
ちょ、ちょっと! あの猫だらけの家、
屋根の上に人間の女の子がいるよ!?
因幡 てゐ:
おーい、そこの君!
どうしてそんなところにいるのー?
女の子:
ね、猫が……。猫、こわくて……!
少名 針妙丸:
あー。もしかして、猫が怖くて逃げてたら
いつの間にか屋根まで登っちゃって……。
因幡 てゐ:
結構高さもあるし、屋根にも猫が来ちゃったし、
身動き取れなくなった……ってとこかしら。
因幡 てゐ:
そうなると、助けてあげるにしても、まずは
この猫たちをどうにかしなくちゃいけないわね。
橙:
それなら、私の出番だね! デカ猫にも
認められた今の私なら、猫を従えられるはず!
橙:
リーダーシップってやつを見せてやる!
みんな! リーダーの所に集まれ~!
少名 針妙丸:
……一匹も来ないね。
橙:
なんでー!?
橙:
こ、こうなったら、やっぱり物で釣るしかない!
ちょうどマタタビあるから試して……あっ!?
橙:
うわあああ~~!?
こ、こけた拍子に、マタタビの粉が!
因幡 てゐ:
ゲホッ。おい、なにバラまいてんのよ!
これじゃ、猫たちが興奮して……!
マヨヒガの猫たち:
にゃー! にゃーにゃー!!
女の子:
ふええ~~ん!
猫が、あばれだしたぁ~~!!
少名 針妙丸:
ま、まあ。結果的にはよかったんじゃない?
屋根にいた猫が、ほとんど降りてくれたし。
因幡 てゐ:
あと屋根に残ってるのは、
女の子と……白い猫一匹だけか。
橙:
……あ。
あの白猫、高い所が苦手な子だったような。
因幡 てゐ:
ちょっと、どこ行くの?
橙:
たぶん、自力じゃ降りられないよ。
ちょっと迎えに行ってくる!
橙:
よ、っと。屋根の上、到着!
二人とも! 私が抱えて降ろしてあげるよ!
女の子:
……や、やだ。こわい。猫もこわいけど、
ここから降りるのも、もっとこわい……!
マヨヒガの猫:
みー……。
橙:
ええっ、大丈夫だよ! ちゃんと抱えるから!
ほら……、どうしよう!?
因幡 てゐ:
抱えて降りるのも嫌となると、やっぱり
どうにか自分で飛び降りてもらうしかないよね。
因幡 てゐ:
こういう時は……、そうね。
化け猫。まずは、あんたが飛んでみせるのよ!
少名 針妙丸:
え? でも、そうしたら女の子たちが
置いてけぼりになっちゃうじゃない。
因幡 てゐ:
怖がって動けなくなってるやつを
無理に動かそうとしても、ケガするだけよ。
因幡 てゐ:
だったら、まずはお手本を見せて、
後からついてきてもらった方がいいわ。
橙:
そっか、お手本を見せる……。
リーダーの心得その3でも、そんなこと言ってた!
少名 針妙丸:
待って待って。猫はともかく、
人間の子供が屋根から飛んだら、怪我するよ!
少名 針妙丸:
私たち小さいから受け止められないと思うし、
何か用意しないと……!
因幡 てゐ:
大丈夫、毛玉ならいっぱいいるわ。
小さいままじゃ潰れるけど、大きくなれば……!
少名 針妙丸:
毛玉を大きく……? ああ、なるほど!
そういうことなら、任せておいて!
橙:
よーし。それじゃお手本として先に飛ぶよ!
女の子と白猫は、後からついてきて!
橙:
行くぞ~……、それーっ!
マヨヒガの猫:
……み。みゃーうっ!
女の子:
あ……。わ、わたしも! ……それっ!
少名 針妙丸:
きた! それじゃ、この小槌で……、
大きくなあれ、猫たち!
マヨヒガの猫たち:
にゃああああ~……!
橙:
わぷっ!? なんか、もふもふの上に落ちた!
これ……、巨大な猫!?
女の子:
……あはっ、あはは! おっきい猫、へんなの!
もふもふ、ふかふか、たのしーい!
少名 針妙丸:
……ふー。なんとかなったね。
みんなケガもなさそうでよかったよ。
因幡 てゐ:
協力してくれた猫たちと、橙、あんたのおかげね。
……ふふ。リーダーらしくなってきたじゃない。