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紅魔館
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フランドール・スカーレット:
お姉様、いやにご機嫌じゃない。
何かいいことでもあった?
レミリア・スカーレット:
うふふ。とっておきのお菓子が手に入ったの。
そうだわフラン。今からこれで、お茶会にしない?
フランドール・スカーレット:
お姉様のくせに、
たまにはいいこと言うじゃない!
レミリア・スカーレット:
『くせに』も『たまには』も、余計よ。
それじゃあ、さっそく美鈴に準備させましょう。
紅 美鈴:
はい、お茶が入りましたよ~。
それで、こっちがお菓子です。
フランドール・スカーレット:
わあっ、いい匂い!
レミリア・スカーレット:
ふふ、私も前から楽しみにしてたのよ。
それじゃあ、いただき……
十六夜 咲夜:
た、大変です!
フランドール・スカーレット:
どうしたの?
咲夜がそんなに慌てるなんて、珍しいね。
十六夜 咲夜:
図書館の掃除をしに行ったら、
パチュリー様が倒れておられて……!
レミリア・スカーレット:
パチェが!?
いいわ、すぐ行く。
紅 美鈴:
パチュリー様を、ベッドまで運んできました。
紅 美鈴:
命に別状はなさそうでしたし、
何日か眠れば、自然に目覚めると思います。
十六夜 咲夜:
大事には至らなかったようで、何よりだわ。
また実験に失敗なさったのかしら?
レミリア・スカーレット:
あの子の研究好きも病的ね。
今回は、いったい何をやらかしたの?
フランドール・スカーレット:
落ちてる本を見れば、わかるんじゃない?
え~と、どれどれ?
紅 美鈴:
ばれんたいん……? はじめて聞きました。
外の世界の行事っぽいですが。
レミリア・スカーレット:
チョコを多く集めた者が格上ということ?
信仰が強まれば力も強まる、みたいな話かしら。
フランドール・スカーレット:
外の世界にも、そんな楽しそうな
勝負事があるのね!
十六夜 咲夜:
ええと、こちらの本は魔導書ですね。
『感情をチョコレートに変換する魔法』?
十六夜 咲夜:
で、これが、そのチョコレートみたいですね。
パチュリー様の感情からできたものかしら。
レミリア・スカーレット:
パチェったら、たまには粋な研究するじゃない。
親友のよしみで、味見してあげましょう。
レミリア・スカーレット:
あら、美味しい。
いくらでも食べられちゃうわね。
フランドール・スカーレット:
あっ、いいなぁ、お姉様。
私にもちょうだい!
レミリア・スカーレット:
最後のひとつまでしっかり味わって、
感想を伝え……
レミリア・スカーレット:
……ん?
フランドール・スカーレット:
ずる~い! ちょうだいって言ったのに、
全部食べちゃうなんて! お姉様のバカ!
十六夜 咲夜:
あっ、妹様!
レミリア・スカーレット:
悪かったわ、フラン。つい止まらなくって。
気を取り直して、お茶会を再開しましょ?
紅 美鈴:
今日のお菓子、お嬢様のとっておきですもんね!
お茶なら、また淹れ直しますよ~。
フランドール・スカーレット:
残念だけど、再開はできないわ! ……ふふふ。
美味しかったわよ、お姉様のとっておき。
レミリア・スカーレット:
はあ? ……って、ひとつも残ってないじゃない!
フラン、あなた全部食べちゃったの!?
フランドール・スカーレット:
先に独り占めしたのは、お姉様のほう!
怒られる筋合いなんてないわ。
レミリア・スカーレット:
筋合いないわけないじゃない!
姉に対する敬意が、とことん足りてない子ね。
フランドール・スカーレット:
姉、姉って、いつも横暴なのよ。あったまくる!
いい加減どっちが上か、はっきりさせないと!
レミリア・スカーレット:
あら、やろうっていうの?
いいわよ、受けて立とうじゃない。
フランドール・スカーレット:
そうだ。バレンタインって勝負、ぴったりだわ。
感情からチョコを生み出す魔法を使って……。
レミリア・スカーレット:
どっちがたくさんチョコを作れるかで
勝負ってこと? いいじゃない、望むところ!
紅 美鈴:
あ、あの~……。
レミリア・スカーレット:
そうと決まれば話は早い。
咲夜、私を手伝いなさい。
十六夜 咲夜:
……承知しました。
我が主の仰せのとおりに。
紅 美鈴:
咲夜さんっ!?
フランドール・スカーレット:
お姉様ってば、また咲夜に頼るんだ!?
いいもん、じゃあ私は美鈴と組むから!
紅 美鈴:
ええ~!? 私もですか~?
フランドール・スカーレット:
何よ、私のパートナーじゃ
不服だっての?
紅 美鈴:
い、いや……。
そういうわけじゃないですけど……。
紅 美鈴:
ほんとに、やらせちゃっていいんですか?
これって、大変なことになるんじゃ?
十六夜 咲夜:
ああなったお嬢様たちは、お止めしても無駄よ。
いっそのこと、心行くまで争わせたほうがいいわ。
レミリア・スカーレット:
たくさん呼んだ観客から感情を集めて、
盛大にやりましょう。何をするのがいいかしら。
フランドール・スカーレット:
ああ、楽しみ。たっぷりの甘いチョコ。
メインディッシュは、お姉様の吠え面ね!
レミリア・スカーレット:
ほんっとに生意気な妹だこと……。
こてんぱんにしてあげる!
紅 美鈴:
……ほんとに大丈夫かなあ?