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人間の里
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里のカップルA:
はい。これまでの感謝の気持ち。
手作りのチョコレート、受け取ってくれる?
里のカップルB:
これを僕に? ありがとう……!
あとで、僕からもチョコを贈らせてくれ。
依神 女苑:
なーにがバレンタインよ。紅魔館のやつら、
つまんないイベント流行らせてくれちゃってさ。
依神 女苑:
あの吸血鬼姉妹も、最初は喧嘩してたのに
最後は予定調和みたいに仲直りしてたし!
依神 女苑:
こんなイベント、絶対ぶっ潰してやるわ。
とりあえず、誰か協力者でも……。
依神 女苑:
姉さん、ちょうどいいとこに!
ねえ、これからバレンタインを……。
依神 紫苑:
女苑!? わ、私、今は忙しいから……。
依神 女苑:
なによー、姉さんってば!
話くらい聞いてくれてもいいでしょー!
水橋 パルスィ:
誰も彼も幸せそうな顔して……。
妬ましい。あぁ、妬ましい……。
依神 女苑:
あそこにいるの、たしか地底の橋姫ね。
そういえば、どこかで見たような……。
依神 女苑:
……ねえ、あんた。
紅魔館のイベントにいなかった?
水橋 パルスィ:
い、いたけど……。疫病神が、なんの用?
依神 女苑:
私も、この状況が気に入らなくてね。
同じ気持ちなのは、あんたくらいかと思って。
水橋 パルスィ:
まあ、気に入らないのは確かね……。
紅魔館のイベントで、思い知らされたわ。
水橋 パルスィ:
幻想郷でバレンタインが流行ったら、
私はきっと、みじめな気持ちになるって。
水橋 パルスィ:
事実、そうなった。けど、私一人が妬んだとこで、
この浮かれた空気はとても壊せないわ。
依神 女苑:
そうそう。だから、協力して……うわっ!
ユメミタマ!? いつの間に?
依神 女苑:
面倒なことになる前に、
さっさとダンマクカグラで……。
水橋 パルスィ:
待って。
このユメミタマ、中に何か映ってるわ。
依神 女苑:
なにこれ……。泥棒が、チョコを盗んでる?
盗まれたやつらは、がっくりしてるわね。
水橋 パルスィ:
そうだわ。
私が、この泥棒になっちゃえば……。
依神 女苑:
自分からユメミタマに!?
そんなことして、大丈夫なのっ!?
水橋 パルスィ:
……ユメミタマ? なんのこと?
私は華麗なる反逆者、チョコレート怪盗よ。
依神 女苑:
か、華麗なる反逆者……。
なんなのその、ちょっと痛々しい二つ名は。
依神 女苑:
……えっ、姿が一瞬で消えた?
しかも、私のハンドバッグがない!
水橋 パルスィ:
貴方って隙だらけね。
ほら、ハンドバッグは返すわ。ふふふ。
依神 女苑:
はぁ~……。ユメミタマのイメージ通り、
完全に自分を怪盗だと思い込んでるってわけね。
依神 女苑:
それで本当に動きが様になるんなら、
もしかして、ユメミタマって超便利……?
依神 女苑:
こりゃいいわ。ねえ、私と組まない?
バレンタインをぶっ壊すために。
水橋 パルスィ:
バレンタインが気に入らないのは同感ね。
でも、わざわざ組む理由があって?
依神 女苑:
あんたの怪盗スキルは、なかなかのものよ。
でも、チョコはひとつずつしか盗めない。
依神 女苑:
だから、私の『散財させる力』と、
あんたの『嫉妬心を操る力』を合わせれば……。
水橋 パルスィ:
もっと効率を上げられるってことね?
面白いこと考えるじゃない。
依神 女苑:
わかったなら、
さっさと怪盗の力を分けてちょうだい。
水橋 パルスィ:
頭は回るけど、態度のでかいやつね。
ま、いいわ。提案にのってあげる。
依神 女苑:
ふっ……ふふふ。はははははははっ!
依神 女苑:
さあ、浮かれた幻想郷に活を入れるわよ。
チョコレート怪盗団、活動開始!
水橋 パルスィ:
今宵、貴方のチョコをいただきに参ります……。