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幻想郷バレンタイン展 会場
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鈴仙・優曇華院・イナバ:
今のところ、会場に不審者はなし……と。
警備のイナバたちからも報告はないわね。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
それにしても、バレンタイン展を開いた直後に
怪盗団が現れるなんて……。ついてないわ。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
たった二人でコツコツとチョコを盗んで、
いったい何がしたいのかしら?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
あれっ……。貧乏神に天人。
チョコ作り教室で、いったい何を?
比那名居 天子:
何って、チョコを作るに決まってるでしょ。
私は『もらう専』だから、見てるだけだけど。
依神 紫苑:
私がチョコを作ってたの……。
め、迷惑だったかしら?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
そういうわけじゃないわよ。
ただ、チョコレート怪盗について聞きたくて。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
どうやら、チョコレート怪盗団の一人、
『運命に抗う者・J』の正体が、そこの貧乏神の妹らしくてね。
依神 紫苑:
えっ、女苑? 怪盗団に、Jって……。
何それ、知らない……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
この反応じゃ、本当に何も知らなさそうね。
ここで一日、チョコ作ってたなら仕方ないか。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
うわっ! いきなり、なんの騒ぎよ。
……展示スペースの方ね!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
客たちが、お土産のチョコを奪い合ってる?
警備のイナバたちも、乱闘になってるわ……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
展示してあったチョコもなくなってるし!?
そうか、どこかにチョコレート怪盗が……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
そこ! 展示パネルの裏!
悪巧みしてる波長が、丸わかりよ!
水橋 パルスィ:
私たちの隠れ場所を見抜くなんて、
その便利な力、妬ましい……。
依神 女苑:
見つかっちゃったら、名乗るしかないわね。
私は、運命に抗う者……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
あ、そういうのいいから。
とにかく、さっさと捕まりなさい!
依神 女苑:
名乗りを妨げるなんて、カチンと来たわ。
捕まえられるもんなら、捕まえてみな!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
あっ、待ちなさい!
……ちょ、ちょっと。邪魔よ、みんな!
水橋 パルスィ:
永遠亭のウサギは、乱闘騒ぎに巻き込まれて
追ってこられないようね。
依神 女苑:
私の力でお土産のチョコを買わせまくり、
あんたの力で客同士に奪い合わせる。完璧ね。
水橋 パルスィ:
ふふふ……。バレンタイン撲滅に、
また一歩近づいたわ。
比那名居 天子:
待て! 騒ぎの首謀者は、お前たちだな。
えーと、なんだっけ……おしゃれ泥棒!
水橋 パルスィ:
チョコレート怪盗よ、チョコレート怪盗。
貴方、どういう覚え違いしてるの?
比那名居 天子:
お前たちを成敗したら、私は一躍ヒーローだな。
天人に捕まる栄誉をくれてやろう、悪党ども!
依神 女苑:
天人くずれなんかに捕まってたまるか!
P、一気にたたみかけるわよ!
比那名居 天子:
消えたっ!?
この私が、動きに反応できない!?
比那名居 天子:
くっ……。こいつらの動き、普通じゃない。
まさか、ユメミタマに憑かれて……。
依神 紫苑:
女苑! 貴方、本当に怪盗なんて……。
依神 女苑:
姉さん、ここにいたのね。
わかったなら、私を手伝って……ん?
依神 女苑:
姉さんが持ってるの、チョコじゃない!
しかも、地味に手の込んだ包装……。
依神 紫苑:
あっ。これはね……。
さっき、私が作って……。
依神 女苑:
はぁあああ!? 姉さんのくせに、
なーにバレンタインを満喫してんの?
依神 女苑:
どうせ、そのチョコだって不良天人に
あげるやつなんでしょ? あー、やだやだ。
依神 紫苑:
いや、このチョコは……。
水橋 パルスィ:
J、私たちの目的を忘れたの?
あんなチョコひとつにこだわってる場合?
依神 女苑:
ここで予告してやるわ、姉さん。
あんたのチョコも必ず盗んでやる!
水橋 パルスィ:
正気に戻った警備員たちが
集まってきたわね……。
依神 女苑:
……この場はいったん退くわ。
姉さん、覚悟しておくことね!
依神 紫苑:
女苑……。