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迷いの竹林
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依神 女苑:
う、うう……ここは……?
姉さん……それに天人も……。
比那名居 天子:
ユメミタマは浄化されたようだな。
お前、チョコレート怪盗になってたんだよ。
依神 女苑:
怪盗……え? なにそれ……。
いや、かすかに覚えがあるわ。
依神 女苑:
バレンタインの空気が気に入らなくて、
橋姫に協力を頼んで、それから……。
依神 紫苑:
女苑、身体は大丈夫?
痛いところ、ない?
依神 女苑:
ええ、特には……。それより橋姫は?
私、あいつから力を分けてもらったの。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
橋姫なら、そこで寝てるわよ。しばらく
目覚めそうにないから、貴方を先に浄化したの。
依神 女苑:
そう……。それじゃあ、私といっしょに、
怪盗になって暴れてたのね。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
そーゆーこと。
で、私たち三人が捕まえに来たわけ。
依神 紫苑:
女苑、これなんだけど……。
依神 女苑:
甘ったるい匂いに、センスのない包装……。
このチョコ、姉さんが作ったの?
依神 紫苑:
うん……。
女苑に食べてもらおうと思って。
依神 女苑:
そこの天人に……じゃなくて、私に?
どうして?
依神 紫苑:
どうしてって、言われても……。
とにかく、受け取ってよ。
依神 女苑:
じゃあ、まあ……。
そこまで言うなら……。
依神 女苑:
(私、なんで受け取ろうとしてんの?)
依神 女苑:
(バレンタインをぶっ壊すつもりだったのに、
これじゃあ、バカみたいじゃない……)
水橋 パルスィ:
見損なったわよ、J。……いや、女苑。
このチョコは、没収させてもらうわ。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
貴方、いつの間に目を覚ましたの!?
相方が捕まったんだから、観念しなさい!
比那名居 天子:
たぬき寝入りで、反撃の隙を狙ってたんだろ。
コソ泥のやりそうなことだ……なっ!
依神 女苑:
橋姫……いえ、パルスィ待って!
くっ、追いつけない!
依神 紫苑:
もう女苑は怪盗じゃないもの。仕方ないわ。
無理に追いかけるのは、やめましょう?
依神 女苑:
……あいつは私が捕まえる。
そのくらいのケジメ、自分でつけなくちゃ……。
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翌日 パルスィのねぐら
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水橋 パルスィ:
……盗んだチョコが重い。
とりあえず、適当に積んで、と……。
水橋 パルスィ:
結局、最初から一人でよかったのよ。
チョコだって、山のように集まったし。
水橋 パルスィ:
でも、このチョコどうしよう……。
盗んだところで、私のものにならないのに。
水橋 パルスィ:
私……今、なんて言ったの?
依神 女苑:
見つけたわよパルスィ。
こんな、じめっとした所に隠れちゃって……。
水橋 パルスィ:
女苑、私を捕まえに来たのね。
でも、どうしてここが?
依神 女苑:
あんたに渡したいものがあってね。
ほら、さっさと受け取りなさい。
水橋 パルスィ:
これ……チョコじゃない!
貴方、ふざけてるの?
依神 女苑:
ふざけちゃいないわよ。
これは、いわゆる……お気持ちってやつ?
依神 女苑:
ユメミタマに憑かれてたから記憶は曖昧だけど、
あんたと怪盗するの、なんか楽しかったし……。
水橋 パルスィ:
だからって、そのお礼がチョコ?
勘弁してよ。こんなもの……。
水橋 パルスィ:
こんな、もの……。
依神 女苑:
みんな、今よ!
水橋 パルスィ:
チョコの山から……!
貴方たち、いつの間に!?
比那名居 天子:
チョコの山からこんにちは、ってね。
逃げ場はないぞ、橋姫!
依神 女苑:
チョコレート怪盗団を終わりにしましょう。
いくわよ。ダンマクカグラ!