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数時間前 人間の里
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比那名居 天子:
橋姫のやつ、性懲りもなく怪盗を続けて……。
しかも、足取りすら掴めてない。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
単独犯になったことで慎重になっているのね。
今後、派手な動きはしないでしょう。
依神 紫苑:
女苑は、橋姫の隠れ家を知らないの?
どこかにチョコを隠してるはずよね。
依神 女苑:
知らないわ。あいつに任せてたから。
でも、確かに先回りはいいかも……。
依神 女苑:
……姉さん。いきなりなんだけど、
チョコの作り方を教えてくれない?
依神 紫苑:
えっ……。こんなときに、どうして?
それに私、教えられる自信なんて……。
依神 女苑:
この中で、チョコを作ったことがあるのは
姉さんしかいないわ。そうでしょ?
依神 女苑:
それに、私がチョコを作ってる間、
二人にもやってほしいことがあるの。
比那名居 天子:
何を言い出すのかと思ったが、
それなりに考えがあるみたいだな。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
教えてやんなさいよ。
やってほしいこと、ってのは任されたから。
依神 紫苑:
……わかった。
チョコの作り方、女苑に教えるわ。
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現在 パルスィのねぐら
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水橋 パルスィ:
くっ……。な、何が起こったの……。
疫病神と……他に、何人も……。
依神 女苑:
ユメミタマは浄化できたみたいね。
私と怪盗団をやってたのは覚えてる?
水橋 パルスィ:
怪盗って、あのユメミタマに映ってた……。
そうか。私、本当にチョコを盗んだのね。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
で、私たちが捕まえに来たわけよ。
チョコの山に隠れて、待ち伏せてね。
水橋 パルスィ:
この量を私が……。は、はは……。
なんてことしたんだろ、私。
依神 女苑:
半分は私よ。怪盗団だって、
私が組もうって先に言い出したの。
水橋 パルスィ:
そう。でも、バレンタインが気に食わないなら、
ここに閉じこもってればよかったのよ。
依神 女苑:
それだって、私も同じだわ。でもね、
そう腐ることない。少なくとも、あんたは。
水橋 パルスィ:
……どうして?
依神 女苑:
この場所がわかったのは、あんたをよく知る
地底の妖怪たちに聞いたからなの。
依神 女苑:
みんな、心配してたらしいわよ。
私の方が妬ましいくらいにね。
比那名居 天子:
地底の妖怪たちには、
私と永遠亭のウサギが聞いて回ったんだ。
比那名居 天子:
盗んだチョコの山には、お前宛のもあったぞ。
鬼に、土蜘蛛に……地霊殿からのもあるな。
比那名居 天子:
こんなにチョコをもらえるやつが、
バレンタインをどうしようって?
水橋 パルスィ:
な、何よ……。こんなことされたら、
誰を妬めばいいか、わからないじゃない。
依神 紫苑:
えっと……。こんなときに聞くのもアレだけど、
私から奪ったチョコは覚えてる?
水橋 パルスィ:
悪いけど記憶にない……と思ったら、
それっぽいのが近くにあったわ。どうぞ。
依神 紫苑:
そう、これ! あぁ、よかった。
じゃあ、改めて……。
依神 紫苑:
はいこれ。バレンタインのチョコ。
依神 女苑:
はいはい。もらうと言った手前、受け取るわ。
でも、食べる前にやることやらないとね。
依神 女苑:
盗んだチョコの山、持ち主に返さないと。
ここまでやって、ようやくケジメをつけられる。
水橋 パルスィ:
バレンタインは好きになれないけど、
私も責任を取って、チョコを返すわ。
依神 紫苑:
それなら、私も手伝う。
さすがに二人じゃ厳しいでしょ?
比那名居 天子:
過ちはすぐに改めるもの。
うん、私も手を貸してやろう。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
バレンタインが終わる前に済ませましょ。
私も他に、やっておきたいことがあるし。
水橋 パルスィ:
私たちにやらせておけばいいのに、
物好きなやつらなんだから……。
依神 女苑:
手伝いたいんなら、手伝ってもらいましょ。
みんな、チョコを持てるだけ持って。
依神 女苑:
行くわよ。
チョコレート返却作戦、スタート!
三人:
おーっ!