-------------- 数時間前 人間の里 -------------- 比那名居 天子: 橋姫のやつ、性懲りもなく怪盗を続けて……。 しかも、足取りすら掴めてない。 鈴仙・優曇華院・イナバ: 単独犯になったことで慎重になっているのね。 今後、派手な動きはしないでしょう。 依神 紫苑: 女苑は、橋姫の隠れ家を知らないの? どこかにチョコを隠してるはずよね。 依神 女苑: 知らないわ。あいつに任せてたから。 でも、確かに先回りはいいかも……。 依神 女苑: ……姉さん。いきなりなんだけど、 チョコの作り方を教えてくれない? 依神 紫苑: えっ……。こんなときに、どうして? それに私、教えられる自信なんて……。 依神 女苑: この中で、チョコを作ったことがあるのは 姉さんしかいないわ。そうでしょ? 依神 女苑: それに、私がチョコを作ってる間、 二人にもやってほしいことがあるの。 比那名居 天子: 何を言い出すのかと思ったが、 それなりに考えがあるみたいだな。 鈴仙・優曇華院・イナバ: 教えてやんなさいよ。 やってほしいこと、ってのは任されたから。 依神 紫苑: ……わかった。 チョコの作り方、女苑に教えるわ。 -------------- 現在 パルスィのねぐら -------------- 水橋 パルスィ: くっ……。な、何が起こったの……。 疫病神と……他に、何人も……。 依神 女苑: ユメミタマは浄化できたみたいね。 私と怪盗団をやってたのは覚えてる? 水橋 パルスィ: 怪盗って、あのユメミタマに映ってた……。 そうか。私、本当にチョコを盗んだのね。 鈴仙・優曇華院・イナバ: で、私たちが捕まえに来たわけよ。 チョコの山に隠れて、待ち伏せてね。 水橋 パルスィ: この量を私が……。は、はは……。 なんてことしたんだろ、私。 依神 女苑: 半分は私よ。怪盗団だって、 私が組もうって先に言い出したの。 水橋 パルスィ: そう。でも、バレンタインが気に食わないなら、 ここに閉じこもってればよかったのよ。 依神 女苑: それだって、私も同じだわ。でもね、 そう腐ることない。少なくとも、あんたは。 水橋 パルスィ: ……どうして? 依神 女苑: この場所がわかったのは、あんたをよく知る 地底の妖怪たちに聞いたからなの。 依神 女苑: みんな、心配してたらしいわよ。 私の方が妬ましいくらいにね。 比那名居 天子: 地底の妖怪たちには、 私と永遠亭のウサギが聞いて回ったんだ。 比那名居 天子: 盗んだチョコの山には、お前宛のもあったぞ。 鬼に、土蜘蛛に……地霊殿からのもあるな。 比那名居 天子: こんなにチョコをもらえるやつが、 バレンタインをどうしようって? 水橋 パルスィ: な、何よ……。こんなことされたら、 誰を妬めばいいか、わからないじゃない。 依神 紫苑: えっと……。こんなときに聞くのもアレだけど、 私から奪ったチョコは覚えてる? 水橋 パルスィ: 悪いけど記憶にない……と思ったら、 それっぽいのが近くにあったわ。どうぞ。 依神 紫苑: そう、これ! あぁ、よかった。 じゃあ、改めて……。 依神 紫苑: はいこれ。バレンタインのチョコ。 依神 女苑: はいはい。もらうと言った手前、受け取るわ。 でも、食べる前にやることやらないとね。 依神 女苑: 盗んだチョコの山、持ち主に返さないと。 ここまでやって、ようやくケジメをつけられる。 水橋 パルスィ: バレンタインは好きになれないけど、 私も責任を取って、チョコを返すわ。 依神 紫苑: それなら、私も手伝う。 さすがに二人じゃ厳しいでしょ? 比那名居 天子: 過ちはすぐに改めるもの。 うん、私も手を貸してやろう。 鈴仙・優曇華院・イナバ: バレンタインが終わる前に済ませましょ。 私も他に、やっておきたいことがあるし。 水橋 パルスィ: 私たちにやらせておけばいいのに、 物好きなやつらなんだから……。 依神 女苑: 手伝いたいんなら、手伝ってもらいましょ。 みんな、チョコを持てるだけ持って。 依神 女苑: 行くわよ。 チョコレート返却作戦、スタート! 三人: おーっ!