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玄武の沢
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鍵山 雛:
……よし。流し雛の数は、これで十分ね。
鍵山 雛:
今日は、年に一度のひな祭り。
頑張って、たくさん厄を集めなきゃ!
上白沢 慧音:
やあ。準備は進んでるかい?
鍵山 雛:
できたものは、この箱に入れておいたわ。
はい、どうぞ。
上白沢 慧音:
紙を切り抜いたインスタント流し雛に、
昨年使ったものを修理したリサイクル流し雛。
上白沢 慧音:
これだけあれば十分だろう。預かるよ。
で、きみに頼まれていたことだが……。
上白沢 慧音:
古い雛人形は必ず流し雛をするよう、
里の人間たちにしっかり伝えておいたぞ。
上白沢 慧音:
最近は、流し雛をやらない者が
増えているからな。
鍵山 雛:
そうそう。気持ちはわかるけど、
それじゃあ厄が溜まり続けて危険だからね。
鍵山 雛:
流されずに溜め込まれた厄は、
いずれ、よくないものまで引き寄せてしまう。
鍵山 雛:
悪鬼に怨霊……。今年のお祭りで、
ぜーんぶすっきりさせましょう!
上白沢 慧音:
ああ。例年より大変だろうが、頼む。
ただ……、きみは本当にいいのか?
鍵山 雛:
いいって?
上白沢 慧音:
きみは年に一度、流し雛というかたちで
人間たちの厄を一手に引き受けている。
上白沢 慧音:
それは、人から感謝されるべき行いだと、
私は常から思っていたんだ。
上白沢 慧音:
それなのに里の人々は、きみのことを
まるで疫病神か何かのように……。
鍵山 雛:
私はただ、厄が自分の力になるから
やってるだけよ?
鍵山 雛:
それに、少しくらい嫌われてたほうが、
厄を押しつけるほうも気が楽でしょ?
上白沢 慧音:
……なら、これ以上は何も言うまい。
しばらくしたら、改めて様子を見に来るよ。
鍵山 雛:
ええ。こちらは任せて。
貴方も、ひな祭りを楽しんで。
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ひな祭り会場
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アリス・マーガトロイド:
鬼の攻撃から桃太郎をかばい、
命を落とした犬、猿、キジの三匹……。
アリス・マーガトロイド:
絶望に打ちひしがれた桃太郎が
覚醒するときは、果たしてやってくるのか?
アリス・マーガトロイド:
アクション人形劇、新訳・桃太郎!
続きは、午後の公演で!
アリス・マーガトロイド:
ふう……これで一息つけるわね。
上白沢 慧音:
アクション主体の人形劇、お見事。
寺子屋の生徒たちが熱中していたよ。
アリス・マーガトロイド:
思いついたときは冗談半分だったけど、
ちゃんとウケたみたいでよかったわ。
聖 白蓮:
あら、寺子屋の先生に人形劇の……。
ごきげんよう。奇遇ですね。
上白沢 慧音:
このたびは、お疲れ様です。
出し物の方は一段落ですか?
アリス・マーガトロイド:
どーも。命蓮寺の住職さん。
で、出し物って?
聖 白蓮:
門徒たちと雛人形の仮装をしていたのです。
今は休憩中なので、衣装は脱いでいますけれど。
上白沢 慧音:
『等身大ひな壇』と言ってな。
流し雛に続く、今回のメインイベントだ。
アリス・マーガトロイド:
人形劇の準備で、全然気づかなかったわ……。
午後は、ちゃんと見ておかないと。
聖 白蓮:
そういえば、流し雛の方はどうでしたか?
私どもは、一足先に済ませましたが……。
上白沢 慧音:
盛況ですよ。里総出で厄落としといった様子で、
皆、長年飾っていた雛人形を流しに来ています。
アリス・マーガトロイド:
古い人形は、色々とあるものね。
さっさと厄落としするのが正解……。
アリス・マーガトロイド:
なに? 今の不吉な感じは……。
聖 白蓮:
玄武の沢の方から感じたように思います。
あそこには、たしか……。
上白沢 慧音:
確かめに行こう。二人とも同行を!