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山奥のマヨヒガ
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橙:
もうすぐお花見の季節ですね、藍様!
八雲 藍:
ええ、そろそろつぼみがつく頃だね。
橙:
今年の宴会も楽しみだなー! そうだ。
咲いてる桜があるか、見てこよっと!
八雲 藍:
ふふふ。
橙ったら、あんなにはしゃいで。
八雲 藍:
まあ、無理もないか。
紫様と三人、お花見するのが恒例だからね。
八雲 藍:
紫様……来てくださるだろうか。
いえ、恒例のお花見になら、きっと……。
橙:
わーー! 何これーーー!?
八雲 藍:
え? 橙、どうかしたの?
……って、何だこれは!?
橙:
このへんの桜ぜーんぶ、
幹が白くなっちゃってる!
八雲 藍:
ほ、本当だ……。
これは、もしかして、桜が病にかかって……?
八雲 藍:
(この前見た時には、何事もなかったというのに。
いつの間に、ここまで!?)
橙:
びょ、病気って!?
もしかしてこの桜、枯れちゃうの!?
橙:
そんなのいやだ! 去年も、その前も、
ずっとみんなでお花見してきたのに……うわぁぁあん!
八雲 紫:
この桜は枯らさないように。
貴方が育てるのよ、藍。
八雲 藍:
落ち着いて、橙。
まだ枯れると決まった訳じゃない。
八雲 藍:
むしろいま見つかって、よかったかもしれない。
まだ間に合います。急いで処置をしよう。
橙:
ぐすっ……ほんとに?
藍様、私、どうすればいい?
八雲 藍:
そうだね、まずは……。
八雲 藍:
これでよし、と。応急処置だけど、
これで桜は枯れないはずだ。
橙:
やったー! これで安心ですね、藍様!
八雲 藍:
けど、今年満開になるのは絶望的かもしれない。
そもそも、咲くかどうかすらも……。
橙:
ええーーーー!?
今年は、お花見ができないってこと!?
八雲 藍:
……枝を見て。今の時期、ついてるはずの
つぼみがほとんどないんだ。
橙:
あ、ほんとだ。
なんとかならないんですか、藍様ぁ……。
八雲 藍:
大丈夫。これはおそらく、病によって
花を咲かせるエネルギーが奪われたせいだろう。
八雲 藍:
代わりのエネルギーとして、一度に大量の
春を与えれば、例年通りの満開になるだろうね。
橙:
別の場所から春を持ってくれば、桜が咲くってこと?
でも、よその春を奪ったら、まずいんじゃ……。
八雲 藍:
そう。どこか一ヵ所から持ってくるのはダメだ。
幻想郷の各地から、少しずつ集めるのがいい。
八雲 藍:
骨の折れる作業ではあるけど……、
それで、足りる量になるはず。
橙:
わかりました! そうと決まれば
春集め大作戦ですね!
八雲 藍:
ええ。マヨヒガの桜を咲かせるため、
頑張ろう!
橙:
おー!
八雲 藍:
しばしお待ちください、紫様。
今年の宴会も、つつがなく開催してみせます!