-------------- マヨヒガ -------------- 橙: よーし、猫たち! この付近の春集めは任せたよ! 橙: 私と藍様は、手分けして 遠くの方から集めてくるからね! マヨヒガの猫: にゃー! 八雲 藍: なーんて言ってたけど、橙たちは本当に大丈夫かな。 八雲 藍: ん? なんだろう、この暖かい風。 森の方から? 様子を見ておこう。 -------------- 魔法の森 入口 -------------- 八雲 藍: この暖かな気候に、生き生きした草花……。 すごい! この森、春があふれている! 八雲 藍: これだけあるなら、橙も呼んで 二人で集めたほうが良いかも知れない。 八雲 藍: マタタビを用意して、 橙たちに呼びかけを……って、あら? 八雲 藍: 貴方は、命蓮寺の僧侶の……。 こんな所で、いかがしました? 寅丸 星: どうも。近くを散歩していたんですが、 この辺りから、いい匂いがしまして。くんくん。 八雲 藍: 花の香りでしょうか?  この森、やたらと春の気配がしますから。 寅丸 星: いや、森の奥からというより、この辺りから……。 なんでしょう、この気分が高揚する香りは。 八雲 藍: ……まさかとは思いますが、これでは。 寅丸 星: ハッ!? それは、マタタビ……! もしかして私、マタタビに釣られました!? 八雲 藍: 猫を呼ぶつもりが、虎が釣れてしまうとは……。 寅丸 星: うう、そんなぁ。恥ずかしくて寺に帰れない……。 頼みます。このことは、どうか誰にも……! 八雲 藍: まあ、わかりますよ。 私も油揚げには目がないので……って、 八雲 藍: いけない、いけない。 早く橙を呼ばないと。 寅丸 星: 何か、お急ぎの用事ですか? 私でよければ、お手伝いしますが。 八雲 藍: それは助かります。よいのですか? 寅丸 星: 人助け、いや妖怪助けは命蓮寺の信条ですから。 毘沙門天としての名誉も回復したいですし……。 八雲 藍: ありがとうございます。それでは、 森で春を集めるのを手伝っていただけますか? 寅丸 星: 春を、ですか? ふむ、わかりました! では、さっそく始めましょうか。 寅丸 星: その代わり、さっきのことは どうか内密にお願いします……。 八雲 藍: ふぅ。これだけ集めれば充分でしょう。 ありがとうございました、星さん。 八雲 藍: あとは、これを持って帰れば……って、 くっ! 何だ、この風!! 寅丸 星: すっごい風! あっ、藍さん! 集めた春が!! 八雲 藍: へ、春? あっ、うわあああああ!!! 八雲 藍: そ、そんな……。 集めた春が、すべて吹き飛ばされて……。 寅丸 星: なんでしょう、今の強風は……。 ……いや、ただの風ではないみたいですね。 寅丸 星: 森の中にあんなにあった春の気配も、すべて なくなってます。まるで誰かが攫ったかのように。 八雲 藍: えっ!? ……本当だ。 さっきの風は、何者かの仕業ってこと……? 寅丸 星: そうかもしれません……。 追ってみましょう! 八雲 藍: 森の外に出たはいいものの……。 どこへ行ったか、見当もつきませんね。 寅丸 星: そうですね……。あ、あそこに人間がいます。 何か知らないか、聞いてみましょう。 通行人A: ふぅ、収まったか? なんだったんだ、さっきの風は。 通行人B: もしかして、春一番ってやつじゃない?  体感したの、はじめてかもー! 八雲 藍: すみません。先ほどの風ですが、 どちらに吹いていったか、わかりますか? 通行人B: わっ、妖怪……!? ええと、たしか森の方から吹いてきてー。 通行人A: 向こうの方に吹き抜けていったな。 八雲 藍: ありがとうございます。 この方角は……博麗神社がある方です。 寅丸 星: 急いで追いかけましょう!