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博麗神社境内
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八雲 藍:
空気が暖かくなってきた。
やはり、こちらで間違ってなかったようですね。
寅丸 星:
魔法の森だけじゃなく、道中の春も
なくなっていましたね。いったい誰がこんな……。
寅丸 星:
あっ!
藍さん、見てください! あそこ!
伊吹 萃香:
よーし、これで神社は大丈夫かな!
次の場所はー……って、
伊吹 萃香:
あーーー! あんたたち、森にいた
春泥棒じゃん! まさか追いかけてきたの!?
八雲 藍:
貴方は、伊吹萃香……!?
しかし、今の言葉は聞き捨てなりませんね。
八雲 藍:
春を奪ったのは、そちらではないのか?
我々は、余っていた春を集めていただけだ。
伊吹 萃香:
はあ? 何を言ってんだ?
春が余ってるなら、こっちが欲しいくらいだよ。
伊吹 萃香:
とにかく、春は渡さないよ。じゃーねー!
八雲 藍:
なっ!? 春を返せ!!
邪魔するなら容赦はしない。待てーーーッ!!
寅丸 星:
え? 藍さんちょっと待っ……、
ああ、行っちゃった。
寅丸 星:
あんなに怒るなんて少し意外ですが……、
それだけ春集めが重要ということでしょう。
寅丸 星:
にしても、さっきの話、何か引っ掛かるような。
ここの春も、すっからかんだし。うーん……。
寅丸 星:
うん? これは……。
橙:
はあ。ここにも春は全然ない。
藍様は順調なのかな……。
寅丸 星:
おや、貴方は藍さんの式神の。
ご主人様なら、先ほどまでここにいましたよ。
橙:
えっ! それ、ほんと!?
藍様は、どんな様子だった?
寅丸 星:
それなんですが、
少々トラブルが発生しまして……。
橙:
……ふむふむ。わかった!
それじゃあ言われた通り、見てくるね!
寅丸 星:
お願いします! しかし、なるほど。
それで藍さんは、春を集めていたんですね。
橙:
うん、あっという間に桜が病気なのを見抜いて、手当てしたの!
藍様はね、すごいんだよ!
橙:
優しいし、かっこいいし、物知りだし……。
なんでもできる、最強の式神なんだ!
寅丸 星:
ふふ、素敵な方なんですね。
さて、そろそろ我々も動くとしましょうか!
八雲 藍:
はぁ、はぁっ、ちょこまかと……。
霧になって逃げられたのでは、追いつくのは無理か。
八雲 藍:
萃香は、移動しながら幻想郷中の春を集めていた。
いったい、なんのために……。
マヨヒガの猫:
にゃーん。
八雲 藍:
猫? あれ、私……いつの間にか
マヨヒガに帰って来ていたのか。
マヨヒガの猫:
にゃーにゃ。にゃー?
八雲 藍:
これは、タンポポに、ホトケノザ。
橙の言いつけ通り、付近の春を集めてきたのか。
マヨヒガの猫:
にゃあ!
八雲 藍:
……ふふ。ちゃんと猫を従えているなんて、
橙も立派になったなぁ。
八雲 藍:
私も紫様の式神として、こうしてはいられない。
もう一度、萃香を見つけなくては!
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人間の里
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橙:
あっ! 藍様ーーー!!
やっと合流できましたね! よかったー!
八雲 藍:
橙に、星さん!? 二人は一緒にいたんですか?
寅丸 星:
あのあと、神社で偶然合流しまして。
色々と調べていたんです。
八雲 藍:
調べる、とは?
橙:
藍様から春を奪ったっていう、鬼の目的です!
星さんのおかげで、わかったの!
八雲 藍:
えっ、本当に!?
それで、その目的って、いったい……?
寅丸 星:
ひとまず、私についてきてください。
里のはずれに行きましょう。
寅丸 星:
私の推測が正しければ、
鬼はここに来るはずです。
寅丸 星:
見つかったら、また逃げられるかもしれない。
なので、一旦隠れて待っていましょう。
八雲 藍:
あの鬼が、こんな所に……?
伊吹 萃香:
ふう。次はここかな~?
えーっと、問題の桜はーっと……。
橙:
わっ、本当に来た!
やっぱり、星さんの推測は合ってたんだ!